<ハーバードビジネスレビュー解説シリーズ>営業組織のデジタル化の進め方とは?成功のカギはマネジメントにあり!
目次
こんにちは、石井です。
本サイトにて、新しくハーバードビジネスレビューを解説する企画がスタートしました。とはいえ、本サイトは営業とマネジメントに特化しているため、ハーバードビジネスレビューの中でこれらが取り上げられたときに限定した企画になります。
早速ですが、ハーバードビジネスレビュー2023年1月号である「営業組織を強化する」の記事を取り上げていきます。
本日は第一弾として、「営業組織のデジタライゼーションを成功に導く方法(P.17~)」をピックアップします。
現代では、デジタル化は当たり前の中の当たり前ですね。でも、当たり前すぎると見失うこともあります。
例えば…
- デジタル化の目的を部内で連携していますか?
- デジタル化によって得られるメリットは明確ですか?
- デジタル化による副作用やリスクは正しく想定できていますか?
これらは全て、営業マネージャーが答えるべき大切な問いです。では、本記事で「営業のデジタル化」を探っていきましょう。
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営業は時代と共に進化をしてきた…という事実をご存じでしょうか。
詳しくはこちらの記事でご覧いただけますが、近ごろの大きな変化といえば、「ソリューションセールス」から「インサイトセールス」への移行です。
>これからの時代に求められる営業スタイルとは?インサイトセールス著者インタビュー付
デジタル時代を象徴するAIは、私たちよりも正確でスピーディーに決まった仕事をすることが得意です。
そのため、ある課題に対して論理的に解決策を検討することに関しては、人間よりもAIの方が得意と認めざるを得ない部分が存在します。
この論理的な解決を主眼に置いた営業スタイルこそ、「ソリューションセールス」です。
つまり、AIが台頭するデジタル時代においては、ソリューションセールスはテクノロジーに代替えされる存在であるとされ、進化が求められるようになったのです。
そこで現れた営業スタイルが、「インサイトセールス」です。
インサイトセールスは、株式会社アルヴァスデザインの高橋研が、日本における第一人者です。クリエイティブな発想を大切にして、お客様の理念やビジョンの実現を一番に考えた、今、注目されている営業スタイルの1つです。
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デジタル化は、どこから来るのか?
インサイトセールスが注目されていることに加えて、いまは営業のデジタル化がものすごい勢いで進化しています。
では、デジタル化とは、どこから来るのでしょうか。
これに関しては、意見が真っ二つに分かれています。
1つが、通常の経済活動から発生すると考える内生的(endogenous)な見解です。
もう1つが、通常の経済活動ではないものがきっかけとなって発生すると考える外生的(exogenous)な見解です。
前者は、2018年にノーベル経済学賞を受賞したアメリカの経済学者であるポール・ローマ―が有名です。彼の有名な論文は、内生的成長理論(※)というものです。
つまり、テクノロジーの変化は、競合との争いやお客様からの要望がきっかけとなって品質改良や破壊的なイノベーションが起きて進化するという主張です。
※ローマ―氏の論文:Romer, P.M. 1990. Endogenous Technological Change. Journal of Political Economy. 98(5, Part 2), pp.S71–S102.
一方で、後者は新型コロナウイルスもあり注目を集めている考え方です。
新型コロナウイルスに関するファイナンシャルタイムズの記事によると、2020年のパンデミックの真っただ中でアメリカが3つの分野だけ輸入を大きく増やしました。
その3つとは、薬・有機化学・工業用ロボットです。また、本記事の中には日本のことも取り上げられています。日本は、2020年1月から8月において、機械(マシーン)の生産は大きく落ちているものの、工業用ロボットは成長しています。
つまり、外生的なショックがあるときに、経済を全体で捉えると落ち込みますが、テクノロジーの進化はかえって進む可能性があります。
これは、営業にも例外ではありませんね。データを示すまでもなく、オンラインでの商談数が大きく高まりました。
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マイクロソフトのCEOの言葉とは?
私たちの営業環境が、どのようにデジタル化されていくのかを考えてきましたが、ここでマイクロソフトCEOの言葉を見てみましょう。
ハーバードビジネスレビューによると、2021年マイクロソフトのCEOであるサティア・ナデラは、以下の言葉を残しています。
「2025年までに、顧客マーケティングからサプライチェーンに至る幅広い分野で、営業やマーケティングのプロセスが消極的関与よりも積極的関与を促すことが予測される。」
2025年まで残り2年です。
- もう十分にデジタル化されているのではないか?
- いまのデジタル化のスピードにすら、ついていけていない
- 何から手をつけていけば良いかわからない
…このような反応が返ってくるかもしれません。
冒頭で「営業は進化している」ということをお伝えしましたが、仮にマイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏の言葉が正しければ、私たちはもっともっと営業を進化させなければならないのです。
デジタル化による副作用とリスク
何かを変えることは痛みを伴います。デジタル化をすることで、メリットもあれば当然デメリットもあるわけです。私たちは、その上でデジタル化を遂行していかなければなりません。
ハーバードビジネスレビューによると、大きく3つのデメリットがあると解釈できます。
・デメリット1:営業活動にフィットしていない
営業活動をデジタル化するためのツールはたくさんあります。しかし、営業活動はどの企業も特徴があり、1つの型にはまったものではありません。そのため、汎用的なデジタルツールを活用しても、自社の営業活動にフィットしない可能性があります。
この場合、膨大な時間と費用をかけたのに、かえって効果性や生産性が下がる場合もあります。
・デメリット2:組織全体で活用することが難しい
とある組織にはフィットしても、とある組織にはフィットしない…そんなデジタルツールも存在します。特に、規模が大きくなればなるほど、さまざまな営業マネージャーが存在し、さまざまなマネジメントスタイルを持っています。
これは良い面もありますが、統一したデジタルツールを活用する場合、各マネージャーによって導入に向けた温度差も生まれるため組織全体への波及が難しくなる可能性があります。
・デメリット3:システムは進化を求められる
いま最適で、かつ最新のツールは、翌年には陳腐化していることは珍しくありません。それほどに、テクノロジーの進化は速くなっています。
システムを入れ替えることは、予算的に頻繁にできるとは限りませんし、その度に社内の合意を得る必要もあります。
特に、実際にシステムを使用しているメンバーにとって、現状のシステムを変えることはストレスになるため敬遠される可能性があります。これを心理的には、現状維持バイアスと言います。
デジタル化成功のキーポイントとは?
デジタル化のデメリットを先にお伝えしたため、「おや?」と思った方もいらっしゃると思いますが、もちろんキーポイントを押さえれば成功する可能性が高まります。
本書より、特に重要と思われる3つの観点をご紹介します。
・キーポイント1:変革リーダーを指名する
営業現場でデジタル化を推進することは、現状の何かを変える行為に他なりません。必然的に、現状を維持したいという抵抗勢力が生まれます。
抵抗するメンバーの意見を受け入れ、ビジョンを提示し、巻き込んでいくためには変革リーダーの存在が不可欠になります。
変革リーダーに関しては、さまざまな見解が存在しますが、ティシ―とメアリーの論文※は参考になります。変革リーダーとは、ビジョンの達成を目指す存在であり、勇気があります。そして、現場での問題に対して柔軟に対応できる存在そのものです。
※ティシ―とメアリーの論文:Tichy, N.M. and Mary Anne Devanna 1997. The transformational leader : the key to global competitiveness. New York ; Chichester: Wiley.
・キーポイント2:アジャイルな設計をする
デジタル化の時代では、システムは常に変化していきます。状況に応じて、時には戦略を変え、時にはオペレーションを変えていく…このような臨機応変なスタイルで進めていく必要があります。
もちろん、ここでも大切になるのがリーダーの存在です。アジャイルな設計をする上で、大切なことは、「組織として学習し続ける仕組みを作ること」です。ピーター・センゲの「学習する組織」が役に立ちます。
・キーポイント3:チェンジマネジメントを施行する
システムを変更する際に、忘れてはいけないのが人であり、人に紐づくスキルであり価値観です。
新しいシステムに変える過程で、メンバーのやる気を引き出し、モチベーションも高められてこそ、マネージャーと言えます。
メンバーの中には、現状を維持したいと考え、コンフォートゾーンを抜けられない方もいるでしょう。そんな時、新しい道を見せてあげることや、一緒に創り出すこともマネージャーのすべき仕事の1つです。それでこそ、チェンジマネジメントが成されます。
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いかがでしたでしょうか?
本日から、スタートした新しい企画のハーバードビジネスレビューの解説、少しでも実務に活かせる箇所があれば幸いです。本企画では、今後、ハーバードビジネスレビューには掲載されていない論文やジャーナルなども幅広くご紹介していきたいと思います。
もちろん、アカデミックな知識が現場で活用できるかは分かりません。少なくとも、知っていることで新しい発想が生まれたり、打開策のヒントが見えたりするかもしれません。
今回は、2023年1月号「営業組織を強化する」を掲載しています。新型コロナウイルスで私たちの営業環境は大きく変わり、デジタル化への道を加速度的に這い上がっています。
今ここで、デジタル化を見つめなおし、立ち止まり、新しい一歩を踏み出す準備をすることも良いかもしれませんね。
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石井 健博
ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。3歳息子のパパ。