どこよりも詳しいインサイトセールスの実践ガイド!心から営業を楽しもう!
目次
こんにちは、石井です。今回は、インサイトセールスについて徹底的に解説します。
私は、「実践!インサイトセールス!(2018年プレジデント社)」を執筆した高橋研(株式会社アルヴァスデザイン 代表取締役CVO)から、実際に「インサイトセールス」を直接教わり、共に実践してきました。
本記事では、書籍だけでは語りきれない話や、実体験での失敗も盛り込みお話していきます。
また、「インサイトセールス」の手法を説明することはもちろんのこと、皆さんにとって「営業が楽しい」と思える一助になればと思い、執筆しております。
明日からの営業現場で活かせることが、少しでもあると嬉しく思います。
それでは具体的な中身を見ていきましょう。
インサイトセールスとは?
まず、インサイトセールスとは何かをお話します。
よく間違われることがありますが、「インサイドセールス」とは違います。インサイドセールスとは、自社内から電話やメールによってお客様に営業をかける手法のことです。
では、インサイトセールスとはどういった営業のことでしょうか?
インサイトとは?
そもそも、「インサイト」とはどういった意味でしょうか?インサイトとは、訳すと「洞察」や「直感」という意味になります。
インサイトセールスとは?
「インサイト」という言葉が示すように、インサイトセールスとはお客様の表層的な課題ではなく、もっと根っこにある部分まで掘り下げていく営業のことです。
お客様の根本にあるもの…、それは創業者や経営層がもつ価値観です。その価値観は、会社の理念やビジョンという言葉で表されています。
インサイトセールスとは、これらの理念やビジョンを経営層から直接聞き出し、その実現に向けて施策を提案し、実現するまで共に伴奏する営業のことを指します。
ハーバードビジネスレビューで特集された営業手法
インサイトセールスとは、日本ではじまった営業手法ではありません。米国で生まれ、ハーバードビジネスレビューによって紹介され、日本でも徐々に普及するようになりました。
【毎月抽選10名特典付き】インサイトセールスの資料ダウンロードはこちらインサイトセールスの凄さとは?
では、インサイトセールスの凄さとはどのようなところにあるのでしょうか。競合に対しての勝率、そして営業職自体の存続という意味で考えてみたいと思います。
競合勝率は9割が当たり前
まず、一つ言えることは、圧倒的な競合勝率です。私もインサイトセールスを実践していますが、競合に負けた経験がほとんどありません。
著者の高橋が競合負けをした際には、「何か特別な要因があったのですか?」と聞きたくなる…、競合に負けることが不思議なくらい「インサイトセールス」を実践すると受注率が高まります。
(なぜ、インサイトセールスが、これだけの競合勝率を達成することができるのかは、後ほどご説明します。)
特に、私たちが属するのは教育研修業界で、多くの競合が存在します。大手企業への営業をメインにしている私たちにとって、競合がいない場合はほとんどありません。
なぜならば、大手企業はコンペをすることがコンプライアンスとして決められていることが多いからです。
私たちは、インサイトセールスを実践して、正々堂々と競合に勝ってきているのです。
AIに駆逐されない
インサイトセールスの凄さは、もう一つあります。それは、AIには駆逐されないということです。
インサイトセールスは、前述した通りお客様の経営層から理念やビジョンを直接聞き出し、それを実現するための施策を共に考えます。
ここには、クリエイティブな力が必要とされます。そして、クリエイティブに考えられた施策を実行し、理念やビジョンの実現までを伴奏する営業のことなのです。
インサイトセールスを成功させるために必要なこと
インサイトセールスは、お客様の理念やビジョンを実現するための営業です。日本で多くの営業が実施しているソリューションセールスもさることながら、とても難易度が高い営業手法と言えます。
では、実際にインサイトセールスを成功させるには、何が必要なのでしょうか。
1:ターゲット企業の選定
インサイトセールスを成功させるための第一歩は、お客様のターゲティングです。ターゲティングを行う上では、以下の3つの観点がポイントになります。
一つずつご紹介していきます。
1-1:理念やビジョンの重要度
インサイトセールスは、お客様の理念やビジョンを実現するための営業手法です。そのため、お客様自身が「理念やビジョンの実現」を最優先に考えている企業である必要があります。
1-2:情熱的な管理職者の有無
インサイトセールスは、お客様の価値観に触れます。企業の変革や未来への貢献に対して、特に情熱を持って仕事をされている管理職の方には、自身の価値観を深堀するインサイトセールスがヒットするでしょう。
1-3:企業のポテンシャル
インサイトセールスは、理念やビジョンの実現をご支援する営業です。
そのため、お客様も「明日の飯」だけではなく、「数年後の理念やビジョンの実現」を優先的に考えることができるだけのポテンシャルがなければ、本腰を入れた議論になりません。企業のポテンシャルは確認しましょう。
2:アポイントメントの取得
お客様の経営層からアポイントメントを取得することは簡単ではありません。そのため、インサイトセールスを実践したいと考えているお客様の経営層にアポイントメントを取得する際には、準備をしっかり行いましょう。
本章では、アポイントメントの取得に際して特に大切にしたい2つのポイントをご紹介します。
2-1:「ご挨拶」を目的にしない
まず、アポイントメントを取得する際に大切なことは「ご挨拶」を目的にしないということです。
例えば、「ぜひ、一度御社の経営層の方にもご挨拶させてください。」というフレーズを使っても、なかなかアポイントメントの取得率はあがりません。
なぜならば、お客様経営層もお忙しいですし、昨今のコロナウイルスの影響もあり、「ご挨拶程度であれば、お互い忙しいと思いますので、結構ですよ。」と断られてしまうことが多いためです。
2-2:アポイントメントの目的を端的に伝える
アポイントメントを取得する際には、「ご挨拶」ではない目的を設定すべきなのです。
具体的には、
「御社へのご提案をさせていただく前に、経営層の方から経営の理念やビジョン、方針などを直接お伺いさせてください。その方が、提案の方向性もブレがなく、御社内でも実施しやすい施策を考えることができます。」
といったように、お客様にとっての価値をしっかり考えて、目的を言語化させてましょう。
3:ヒアリングの実施
インサイトセールスを実践する上で「ヒアリング」は、最も重要なフェーズと言っても過言ではありません。
本章では、ヒアリングの現場で実際に使える具体的なフレーズまで紹介しますので、しっかりとポイントを押さえましょう。
3-1:ヒアリング内容
まずは、ヒアリングの具体的な内容について見ていきます。
インサイトセールスを実践する上で、お客様の経営層からヒアリングしたい内容は、大きく分けて3つです。具体的には、「経営理念」「ビジョン」「戦略」になります。
実際に、一つずつ見ていきましょう。
3-1―1:経営理念
経営者に経営理念を問うということは、経営者の「価値観」を聞き出すことです。
今までの人生で何を大切にしてきたのか、または経営をする上で、何を大切にしているのかなど、「価値観」に触れる質問を多用しましょう。
ヒアリング例①:「従業員に、常々伝えていることはありますか?」
ヒアリング例②:「日々大切にしている行動指針はございますか?」
ヒアリング例③:「創業時から大切にしているこだわり、文化はございますか?」
3-1-2:ビジョン
経営者が目指す将来を描いたものが、ビジョンになります。経営者が何を目指しているのかという言い換えもできます。
ヒアリング例④:「この事業で実現したいことは何ですか?」
ヒアリング例⑤:「今後、事業の先に見据えているものはありますか?」
ヒアリング例⑥:「お客様に何と言って喜ばれたいですか?」
3-1-3:戦略
戦略とは、ビジョンを実現するために考えていることです。戦略というと難しく捉えられがちですが、4つの観点で質問をすれば、誰でもお客様から上手にヒアリングできます。
具体的には、「どの領域で?」「どんな強みを?」「誰に?」「どんな価値を?」を聞けば良いのです。
ヒアリング例⑦:「どんな分野でお客様を増やしたいですか?」(どの領域で?)
ヒアリング例⑧:「他社と差別化できる強みは何だとお考えですか?」(どんな強みを?)
ヒアリング例⑨:「これから重要視していくターゲット層は、どこですか?」(誰に?)
ヒアリング例⑩:「お客様は御社の何に価値を感じていますか」(どんな価値を?)
3-2:自社の上司や経営層からの協力
お客様の経営層からヒアリングをするインサイトセールスでは、自社の上司や経営層から協力を得ることも重要です。
なぜならば、お客様の経営層が商談に出席される際には、自社も階層を合わせることが無難だからです。
※3-1のヒアリングの観点を纏めた資料が欲しい方はお問合せ下さい。
4:施策の検討
お客様の経営層から「経営理念」「ビジョン」「戦略」を十分にヒアリングした後は、プレゼンテーションに向けての提案内容を構築していきます。
提案内容を作る際に、大切にすべきことは多岐にわたりますが、本日は2つご紹介します。
4-1.ビジョンを実現する施策アイデアを練る
1つ目は、ビジョンを実現するアイデアをクリエイティブに考えるということです。お客様から聞き出したビジョンを実現するためには、何ができるのかというアイデアを発想していきます。
新しいアイデアを発想するからこそ、他社には真似できない自社ならではの提案が出来上がります。
4-2.価値観が表出する言葉を提案書に入れ込む
お客様の経営者が発した価値観に触れる言葉は、一語一句そのまま提案書に入れ込むようにしましょう。
「~価値観が表出する言葉~(MM月DD日A社長インタビューより)」というように表現すると良いです。経営者が直接発した言葉は、お客様の社内でも影響力が高く、競合勝率も高まります。
5:プレゼンテーションの実施
インサイトセールスのプレゼンテーションには、他にはない特徴があります。それは、お客様から聞き出した理念やビジョンの実現を軸に、プレゼンターが語ることです。
プレゼンテーションを実施するにあたって気を付けたい内容は数多くありますが、これだけは押さえるべきというポイントを2つに絞ってご紹介します。
5-1.背景よりもビジョンを先に
多くの場合、プレゼンテーションの冒頭は「提案の背景」についての説明です。
しかし、インサイトセールスのプレゼンテーションの冒頭は、お客様から聞き出した「ビジョン」を語ります。そして、このビジョンの実現に向けての想いを、しっかり表現しましょう。
5-2.プレゼンターの経験と重ねる
プレゼンテーションの冒頭でビジョンを語る際には、「なぜそのビジョンを実現したいのか?」というプレゼンターの個人的な経験を重ねて話すとさらに効果的です。
プレゼンテーションの聞き手に、プレゼンターがいかにビジョンを実現したいのか…、という想いが的確に伝わるからです。
以上、インサイトセールスを進める上で大切にしたいポイントを営業のプロセスごとにご紹介しました。
次章では、インサイトセールスの成功事例について見ていきます。
経営者との対話の観点の資料ダウンロードはこちらインサイトセールスの成功事例①
1つ目に、大手保険業界A社の事例を紹介します。
弊社がお手伝いさせていただいたこのお客様は、全国に支店をお持ちでした。支店に属している営業の方を対象にインサイトセールスを実践して、成果を創出するところまでサポートしました。
旗振り役が大切である!
新しい営業手法であるインサイトセールスを身につけて、実践できるようになるには、乗り越えなければならない壁が多く存在します。例えば、新しい営業手法を身につけることに反対の方もいるでしょう。
また、インサイトセールスを実践してみたが、なかなか成果につながらないと感じる方もいるでしょう。こういったときには、プロジェクトを引っ張るリーダーの存在が不可欠です。
A社には、メンバーを引っ張る旗振り役の部長B氏が存在しました。実際に、プロジェクトが始まる前には、メンバーに声をかけてプロジェクトを実施する意味合いを正確に伝えました。
メンバーの中には、「なぜインサイトセールスを実践する必要があるのか。」ということに対して疑問をお持ちの方もいました。このような際には、B氏はメンバーに声をかけ、納得いくまで対話を行いました。
インサイトセールスは後天的に身につけられる!
インサイトセールスは、お客様の経営層から直接「経営理念」や「ビジョン」を聞き出します。そして、その実現施策をクリエイティブに思考して提案していく営業手法です。
通常の営業手法よりも難易度が高いのが特徴です。
しかし、弊社の講師が「インサイトセールス」についての研修を通してしっかりと知識を伝授しただけでなく、実際の現場に入り込み同行営業や営業会議のファシリテーションも行いました。
このような手厚いフォローをすることで、難易度が高い営業手法であるインサイトセールスも、どなたでも身につけることが可能です。
インサイトセールスの成功事例②
2つ目は、弊社が実践した成功事例になります。私たちのお客様で中堅クラスの飲料メーカーがあります。弊社との取引は今までになく、新しくお付き合いが始まったお客様です。
社長からのヒアリング機会をいただく前、何度かお客様の担当者の方とやり取りさせていただきました。
その中で、「ぜひ、社長から直接理念やビジョンを聞きたい」ということをお伝えして、社長ヒアリングの機会が実現しました。
社長からのヒアリングを終えて、弊社との新しい取引が始まったお客様ですが、今回はヒアリングをする上での大切な観点という意味で事例をご紹介します。
「理念」「ビジョン」の徹底的な傾聴
面談の序盤、社長はややかたい表情で、会社の現状について話をしてくださいました。
通常であれば、会社の現状について話した後は、具体的な商品の内容やサービスについて内容に話の流れが移ることが想定されます。
しかし、インサイトセールスの肝は、経営者から「経営理念」や「ビジョン」を聞き出すことです。そこで、具体的な商品の内容やサービスの話に流れを移さず、今回は、「社長の理念」を徹底的にお伺いさせていただきました。
会社を経営するにあたり大切にしたい考え方や価値観について、最初は恥ずかしがりながらも熱心に話をしてくださいました。話は「私が、なぜこの会社を経営しているのか。」「事業の先に、何を実現したいのか。」といった内容まで多岐にわたりました。
具体的な施策に次元を落とさない
インサイトセールスのヒアリングを成功させるためには、話の次元に意識する必要があります。
社長が「理念」や「ビジョン」について語り始めたら、その次元を商品やサービスなどの具体的な内容に変えず、抽象度の高い話の次元にキープすることがポイントです。
なぜならば、具体的な商品やサービスの話になった途端に、多くの経営者の興味や関心から話の内容がそれるためです。
以上2つの成功事例を見てきました。次章では、インサイトセールスの失敗事例をご紹介します。
インサイトセールスの失敗事例①
失敗する可能性が高い事例として、「複数のお客様経営層から、同じ場でヒアリングする」というものがあります。
価値観を話しにくい場
インサイトセールスは、お客様の価値観を深堀するヒアリングをします。
しかし、複数の経営層に囲まれた中で、自身の価値観を話そうとすると、どうしても周りの経営層のことを意識して、「自身の価値観」よりも、「会社として答えるべきこと」を話す傾向にあります。
こうなると、せっかくのインサイトセールスの実践の場が台無しになってしまいます。
ヒアリング対象のお客様は1名まで
インサイトセールスを実践する上で、ヒアリングの機会を設ける際には、可能な限りお客様は1名にしていただきましょう。もし難しい場合でも、お客様の経営層が2名以上になると、ヒアリングが失敗に終わる可能性があります。
インサイトセールスの失敗事例②
インサイトセールスが失敗に終わる事例として、「自社の上司がインサイトセールスの知識やスキルがない」ということがあります。
インサイトセールス研修の受講生Aさんの話
弊社が実施したインサイトセールス研修の受講生として、Aさんという方がいました。
大変優秀な方で、インサイトセールス研修を通して、スキルの向上が見られ、実際の現場でも活用できるレベルにまで成長されました。
そして、後日、ターゲットとなるお客様の経営層にアポイントメントを取得し、商談に向かいました。今回は、お客様の経営層と初めての商談になるため、自社の上司にも同席を依頼しました。
実際の商談の場で起こった悲劇
いざ商談がスタートすると、Aさんの上司が商談をリードしました。さすが上司は、多くの商談を経験してきているだけあり、お客様の経営層に対しても物怖じすることはありません。
しかし、アイスブレイクを過ぎた頃、Aさんは思わず耳を疑いたくなる言葉を上司から聞かされたのです…。
「今回提案させていただいた商品の価格ですが、もう少し安くできます。他社より高ければ、それより安くするので、ぜひご決済ください。」
上司の言葉を機に、お客様の経営層との商談はコストの話が中心になり、そのまま終わりました。
上司こそインサイトセールスに本腰を
これは、せっかく営業担当者がインサイトセールスの知識やスキルを身に付けたにも関わらず、自社の上司にその知識やスキルがないために失敗をした…、という典型的な事例です。
インサイトセールスを成功させるためには、自社の上司や経営層を巻き込むことが大切です。
そして、いざお客様の経営層との商談になると、その商談をリードするのは自社の上司の役目になるため、上司こそインサイトセールスに本腰を入れて取り組む必要があるのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、インサイトセールスについて語りました。インサイトセールスは、実践することがとても難しい営業手法ではあります。
しかし、インサイトセールスを営業の引き出しの一つとして身につけることで、「競合勝率」が格段に上がり、「AIに駆逐されない」営業力を身につけることができます。
お客様の経営層と対話の経験がない営業担当者の方も、これを機にトークをマスターして、ぜひ実践してみましょう。
私自身は、インサイトセールスを実践して、数年後には一部上場企業の経営層からヒアリングできるレベルまで成長することができました。練習すれば、必ずインサイトセールスのヒアリングは上達します。
また、Insight Sales lab を運営する株式会社アルヴァスデザインでは、インサイトセールスのウェビナーを定期的に実施しています。
「実践!インサイトセールス!(2018年 プレジデント社)」の著者である高橋から、直接インサイトセールスの肝を学べるチャンスです。ぜひ、チェックしてみてください。
※インサイトセールスコンセプトブックのダウンロードはこちらから可能です。先着20名様には実践!インサイトセールスの書籍のプレゼントも!
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石井 健博
ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。3歳息子のパパ。