第十回:トラックメーカーでの事例 ~ いま、生き残るための営業術(輸送経済新聞 2021年4月6日掲載記事)
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こんにちは。高橋です。
全12回にわたり、輸送経済新聞の「まなびカフェ」に連載された「いま、生き残るための営業術」に加筆修正を加えた特別版を公開しており、本日は第10回目です。
前回は、コロナウイルスのパンデミックにより、明らかとなった「インサイトセールス」の存在意義をお伝えいたしました。また、苦楽を共にする真のパートナーの見つけ方についても考えました。
今回は、私がご支援させていただいたトラックメーカーでの「インサイトセールス」の成功事例をお伝えします。
トラックメーカーでの営業プロジェクト
これは、数年前、トラックメーカーでご支援させていただいた営業プロジェクトの事例になります。
これまで実践してきた営業手法に、インサイトセールスという引き出しを増やすことで、お客様から今までとは異なる反応をいただきました。
他業界へも応用可能な事例になりますので、ぜひご参考にしてください。
これまでの営業スタイル
私がご支援させていただいた営業プロジェクトのテーマは、「取引がないお客様に、どのようにアプローチをしてくか?」というものでした。
本プロジェクトのはじめに、普段どのように営業活動をしているのかと聞いてみると、「走行距離や車両年数が長いトラックに対して、車検の時期を見計らいリプレース(トラックの買い替え)を狙う。」とのことでした。
さらに、アプローチ方法を聞いてみると、「飛び込み営業をして、見込がありそうなら、見積書を社長に提出する。」とのことです。
必要不可欠な方向転換
トラックは、1台1千万円を超えます。これほど高額な商品を販売するのに、見積書を手渡すだけで売上が達成できるとは、到底考えられませんでした。
私は、これだけ高額な商品を販売するのではあれば、お客様の経営層、できれば社長から直接話を聞くべきだと伝え、実際にお客様の社長にアポイントメントを取ってもらいました。
社長との面談
アポイントメント取得が完了した数日後の午後1時、私と営業担当者は、トラックメーカーにいました。
アポイントメント取得の際に社長からは、「話すのは良いけど、忙しいから短い時間で!」と何度も言われたようです。
面談前のやり取り
「短時間か…、難しいな」
私は、そうつぶやいて、お客様との面談の部屋に向かいました。隣に目をやると、営業担当者の手には、パンフレットと見積書が握られています。「面談の時間を短めに。」と社長から強く言われたので、無理もありません。
しかし、私は今回の面談では、「社長の話を聞くことに徹底しましょう。」と営業担当者に念押ししました。
いざ、面談のはじまり
面談となり、社長の話を聞いてみると、自身の創業のことを語りだしました。創業時は、とても大変でたくさんの試練を乗り越えてきたとのことです。
社長は、涙目になりながら、自身の過去を厚く語ってくれたのです。その顔は、どこか嬉しそうでもありました。
経営者は孤独なのだ
涙目になりながら語っている社長…。
社長という仕事柄、社内で弱音を吐くこともできず、歯を食いしばって頑張ってきたのだろう…、そんな社長の想いを感じずにはいられませんでした。従業員のことをどれだけ想っても、それが届かないこともある…。
「経営者は孤独だ」とよく言いますが、まさに社長は孤独の中で戦ってきた方なのだろうと感銘を受けました。
驚きの一言
社長の言葉一つ一つに共感し感銘を受けた私が、ふと時計を見るとすでに時刻は午後3時を過ぎていました。社長は2時間近く、語っていたのです。
トラック買うよ
長時間の面談の最後、社長の言葉に私は強い衝撃を受けました。「君たちからトラック2台、買うよ」と言うのです。私たちは、まだ見積書すら提示していないのに…。
冗談かな?と思っていましたが、社長の目は真剣そのもの…。後日社長はトラックを買ってくれたのです。
なぜ、買ってくれたのか?
いくら何でも即決すぎる…。なぜトラックを買おうと思ったのか…その理由をしっかり知りたくなりました。
そこで、後日社長に理由を聞いてみました。
社長からは、「君たちと話をすることで、創業のときに大切にしていたことを思い出した。話を聞いてくれるだけではなく、まとめたり質問してくれたり…、それによってこれからの未来のビジョンも描くことができたんだ。これからも、定期的に将来のことを相談させてよ!」との言葉をいただきました。
経営者から選ばれる営業のポイント
この話は、私にとって一生忘れることのできない体験になりました。営業担当者が、商品やサービスが売ることは、仕事の一つであることは間違いありません。
しかし、それ以上に社長の理念やビジョンを聞き、その実現施策を共に考えるインサイトセールスは、営業の醍醐味の一つと言えます。
私が大切にしている、経営者に選ばれる営業のポイントを記載させていただくので、ぜひ参考にしてみてください。
このほか、インサイトセールスの導入事例をご欄になりたい方はこちらからダウンロードできます。
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いかがでしたでしょうか。
今回は、私が実際に体験したインサイトセールスの成功事例をお伝えしました。
インサイトセールスを成功させるには、お客様の経営層から理念やビジョンを聞き出す必要があります。また、その実現施策を共に描きます。
とても、難易度が高い営業手法ではありますが、経営者の夢の実現に向けて伴走する、素晴らしい営業体験ができます。
次回は、「失敗したA社の戦略」と題して、インサイトセールスが成功しない原因を考え、それに対する対応策をご紹介します。
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高橋 研
株式会社アルヴァスデザイン 代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。