セールス・イネーブルメントで営業を変革する3つの方法
目次
こんにちは。島谷です。
本日は、「セールス・イネーブルメント」について見ていきます。
「セールス・イネーブルメント」はアメリカで生まれた概念です。
元々はIBMをはじめ、名だたる企業で2004年頃から「セールス・イネーブルメント」の言葉が使われはじめ、いまでは営業変革には欠かせない重要な取り組みとなっています。
目まぐるしく市場環境が変わり、これまでの営業手法では通用しなくなった営業戦略も、セールス・イネーブルメントによって変革できるかもしれません。
本記事ではセールス・イネーブルメントを成功させるための具体的な方法や、3つのメリットについて詳しく解説します。
セールス・イネーブルメントの定義は「営業組織強化の取り組み」
セールス・イネーブルメント(Sales Enablement)とは、営業組織や営業プロセスを改善する取り組みを指す言葉です。
セールス・イネーブルメントでは、単なる営業手法の改善だけではなく人材育成や営業DX化の推進も同時におこないます。そのため、営業成果の向上だけではなく「総合的な組織力強化」につながる取り組みとも言えるでしょう。
一方、セールス・イネーブルメントには、一朝一夕では成し得ない部分も多々あります。営業変革のためのITツールの導入などコストがかかる要素もありますし、経営層をはじめ営業組織のメンバー全員が真剣に取り組まなければ成果を出すことはできません。
営業組織だけではなく、人事部門やマーケティング部門との連携も非常に重要になってくるでしょう。
セールス・イネーブルメントは「正解がない取り組み」ともいえます。A社では成功した取り組みでも、B社では全く効果が出ないかもしれません。個社に合わせた対応が必要な取り組みと言えます。
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ここからは、セールス・イネーブルメントによる営業変革の具体的な方法を見ていきます。
セールス・イネーブルメントを実践するためには、下記3つの要素が大切です。
- 営業手法の変革(ウェビナーやオウンドメディアを使った取り組み)
- ターゲット顧客の確認(対象となるお客様をどう攻めるのかを確認する)
- 営業プロセスの改善と部門責任の明確化(カスタマーサクセスやマーケティング部門など他部門との連携)
特にBtoB営業においてはフィールドセールス重視の傾向が強く、「実際に足を運んで熱意を伝える」「顔を見てプレゼンしないと営業とは言えない」など、旧態依然とした体質が続く組織もあります。
訪問営業でしか販売できない商材もありますが、それでもフィールドセールスが訪問するまでの取り組みを変革することにより、あらたな成果を生み出せるかもしれません。
方法1:営業手法の変革
セールス・イネーブルメントにより営業を変革させるには、「既存の営業手法が市場にマッチしているのか?」チェックしてみましょう。
いまやインターネットに情報が溢れている「情報過多」の時代です。営業担当者がしつこく電話や訪問をするような強引な営業は通用しません。お客様の購買プロセスは日々変わってきていますから、営業手法もお客様にあった方法を採用する必要があります。
お客様は営業担当者から話を聞く前にインターネットで情報を収集しているため、営業担当者が伝えるべき情報は従来と比較するとばらつきがでてきています。
しかも、お客様と会ったときにはすでに商品を買うかどうか、意思決定が終わっているケースも多々あるでしょう。
情報過多の時代でも営業成果を上げるには、お客様に有益な情報を与え続け、営業担当者はお客様から見て貴重な情報源であり続けることが重要です。
例えば独自でウェビナーを開催してお客様にとって必要な情報を提供したり、オウンドメディアを立ち上げて業界全般で必要とされている情報を発信したりする手法も効果的です。
方法2:お客様ターゲットの確認
セールス・イネーブルメントで営業組織やプロセスを改革していくためには、自社のターゲットがどのような種類のお客様なのかをよく見極める必要があります。
例えば、下記のような確認をしてみると効果的です。
- これから伸ばしていきたい営業領域は新規のお客様なのか?それとも既存の深耕か?
- 決裁権があるキーマンの情報を知れる環境にあるか?(無計画な営業活動につながっていないか?)
- 対象お客様のマーケット自体、市場での成長余力やポテンシャルはあるか?
上記の要素を整理しておけば、自社営業体制の見直しもやりやすくなるでしょう。
例えば新規開拓中心の営業を展開していきたい場合、セールス・イネーブルメントでは自社営業組織の改革だけではなく、マーケティングやWeb部門との連携や改革がポイントとなります。
お客様の決裁権限者とコンタクトが取りにくいなら、階層別交渉ができるような自社営業組織の体制変更が必要ですし、ときには人脈を生かせる外部人材の採用が必要かもしれません。
上記のように、セールス・イネーブルメントを成功させるには「どのターゲット層に売りたいのか?」を見極める必要があります。
方法3:営業プロセスの改善と部門責任の明確化
セールス・イネーブルメントの大きな取り組みのひとつに「営業体制の変革」があります。
従来のフィールドセールス中心の営業スタイルではなく、Webマーケティング→カスタマーサクセス→フィールドセールス(インサイドセールス)といった「組織間連携で営業していく手法」に変えていくと成果が出るかもしれません。
しかし、多部門で分業して営業をしていくと「ありたい姿」や「目指すべき目標」が曖昧になることがあります。
例えばWebマーケティングの部門担当者は自社サイトの来訪者やユニークユーザー数ばかり注目してしまい、営業獲得数や既存のお客様の育成(=ナーチャリング)にまで気が回らないケースもあるでしょう。
各部門の専門性を発揮することは大切ですが、それぞれの部門がどのような責任を持つのか明確なKPIを設定し、セールス・イネーブルメントの責任者や経営層が厳しくチェックする必要があります。
セールス・イネーブルメントの実現に必要な3つの条件
セールス・イネーブルメントによる営業変革のポイントがわかったら、次に変革を成し遂げるまでに必要な3つの条件についても見ていきましょう。
「セールス・イネーブルメント」と一言でいっても、営業組織の変革や営業DX化など、取り組むべき要素はさまざまです。それぞれの要素で成果を出すためには、特に下記3つの条件が大切になってきます。
- 経営層の支援と理解
- 営業メンバーの教育とトレーニング
- セールス・イネーブルメントの技術的な実装
条件1:経営層の支援と理解
セールス・イネーブルメントをスムーズに進めていくには、経営層の支援と理解はとても重要です。
営業組織改革を進めると古参の営業担当者が抵抗を示すなど、なかなかうまくいかないケースが多々あります。セールス・イネーブルメントに行き詰まったときに現場の営業責任者だけが四苦八苦しても、スピード感ある営業改革はできません。
現場でスムーズな変革をしていくには、経営層の覚悟と支援が必要です。ときにはドラスティックな人員変更や、営業DX化のための予算措置が必要になることもあるでしょう。
そのような決断が必要なときに経営層の動きが遅いと、いつまでたってもセールス・イネーブルメントによる営業変革は成功しません。経営層自らが責任者となって陣頭指揮を執る覚悟も必要です。
条件2:営業メンバーの教育とトレーニング
営業組織の改革では「ヒューマンスキルの向上」が重要になってきます。いわゆる「営業スキルの向上」です。一方、営業実績が伸び悩む組織にありがちなのが「一部の営業メンバーによる属人的営業で実績を上げる」やり方です。
例えば10人いる営業担当者のうち2~3名だけが突出した営業成績を残し、他のメンバーは未達が続いているといったケースです。
優秀な営業担当者の中には独自の営業トークやスキルを身に着けているものの、他メンバーには共有せず全体的なボトムアップにつながっていないこともあります。
組織全体で成果を上げるには、ナレッジの共有を徹底し、全員が同じスキルを保つトレーニングが大切です。
後ほどご紹介するSFAなどを利用すれば成果が出せるマニュアルをすぐに共有できますし、優秀な営業担当者の営業プロセスのどこを見習うべきなのか全員が把握することも可能です。
組織営業アクションチェックリストの資料ダウンロードはこちら条件3:セールス・イネーブルメントの技術的な実装
セールス・イネーブルメントを実現させるには、営業プロセスやお客様の動向をデータ化することは必須です。
単に「営業成果が出ないから改革しよう」と声をあげて、営業トークを修正するためのロールプレイングだけに注力する、または低迷層の同行やサポートばかりしても成果は出ません。
特に営業メンバーの教育にはSFAの導入は欠かせないでしょう。SFAを実装して営業をすれば、営業担当者一人ひとりの行動指標も見える化できます。
営業成果に必要なKPIを他者と比較できるため、「訪問数が足りないのか?」「プレゼンからの成約率が低いのか?」「ARPUに問題があるのか?」などウィークポイントを明確に知ることができます。
またCRM(お客様管理システム)を導入して、お客様が必要とするベストタイミングで営業攻勢をかける仕組みも大切です。
CRMを使えばお客様の購買サイクルやビッグデータを使った購買分析も可能になるため、適切なタイミングでお客様にアプローチができます。
セールス・イネーブルメントがもたらす3つのメリット
最後にセールス・イネーブルメントによる効果についても見ていきましょう。
セールス・イネーブルメントは営業成果の向上だけではなく、コスト削減やモチベーション向上にもつながります。
営業現場では「ノルマが厳しい」「できれば営業がやりたくない」などのネガティブな声も聞こえてきます。
しかし、セールス・イネーブルメントを効果的に実施すれば、少しずつ「自社営業組織のありたい姿」に近づけるかもしれません。
メリット1:営業成果の向上
セールス・イネーブルメントの最大のメリットは「営業成果の向上」です。営業組織で結果を出すにはボトムアップが大切です。
一部の優秀メンバーではなく、低迷層や中堅層も実績が出せる組織でなければ継続した営業成果は出せません。
セールス・イネーブルメントを効果的に実施すれば、SFAなどのITツールを使って優秀な営業メンバーの営業プロセスを共有できるようになるため、全体的なボトムアップが期待できます。
また営業DX化が進めば日報作成などの雑多な仕事も簡素化できるため、より営業に特化できる組織がつくれます。営業KPIの見える化によって全員の意識が向上し、「強い営業組織」が期待できるでしょう。
メリット2:コスト削減
セールス・イネーブルメントによって営業効率が高まると、結果的には組織全体のコスト削減にもつながります。
例えば、フィールドセールス一辺倒で1ヵ月に数件の成約にとどまっていた企業でも、セールス・イネーブルメントによって分業化され、営業担当者一人あたりの成約件数が増えて営業効率が上がる例も多いでしょう。
また、インサイドセールスで一定の売上が確保できれば、フィールドセールスの人件費削減や交通費や車両費などのコストダウンも実現します。これからの営業組織は、より高い「営業効率」が求められます。
「人でしかできない仕事」は、より高度な仕事のみとし、お客様への情報提供やマーケティングは、できるだけWebやITツールを使って効率化するのが理想です。
メリット3:営業担当者のモチベーション向上
最後のメリットは「営業担当者のモチベーション向上」です。特に離職率の高い20代前半の営業担当者については、きめ細やかなモチベーション・マネジメントが重要です。
営業現場に抵抗がある新人メンバーは多いものです。営業をデータ化し仕組み化していくことで「営業に不慣れなメンバー」でも結果が出せるようになります。
営業担当者のモチベーションアップに成功すれば、営業成果も伸びてきますし退職率も下がります。
営業DX化やコンサル費用など、セールス・イネーブルメントの実現には投資も必要ですが、組織改革や営業プロセスの変革に成功すれば結果として企業の利益は向上します。
まとめ
セールス・イネーブルメントの取り組みは、「現状に満足しない営業組織」「成長し続ける営業組織」にとって欠かせない取り組みです。
セールス・イネーブルメントが成功すれば営業成果が出るだけではなく、「誰がマネジメントしても成果を出し続ける」強い組織が生まれます。
一方、セールス・イネーブルメントは一朝一夕で成果が出るものでもありません。「営業組織を変えてみたい」「実績が安定せず悩んでいる」営業責任者は、ぜひ今回のセールス・イネーブルメントで成功するポイントを参考にしてください。
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島谷 大輔
通信系の営業を専門として、BtoBおよびBtoCの両方を経験。
プレイヤーのみならずマネジメント経験も豊富。
自身の営業経験をもっと多くの人に届けたいという想いが強い。