第九回:顧客開拓のポイント ~ いま、生き残るための営業術(輸送経済新聞 2021年3月30日掲載記事)
目次
こんにちは。高橋です。
全12回にわたり、輸送経済新聞の「まなびカフェ」に連載された「いま、生き残るための営業術」に加筆修正を加えた特別版を公開しており、本日は第9回目です。
前回は、お客様の経営層とどのようにアポイントメントを取得すれば良いのかを考えました。
「ご挨拶」を目的としたアポイントメントがなかなか取得できない現状を理解した上で、私たち営業が行うべきことについて思考しました。
今回は、「インサイトセールス」を行う上で大切にしたい考え方や、どのようなお客様をターゲットとすれば良いのかを考えていきます。
なぜ、これからの企業が存続するために、「インサイトセールス」が大切になるのか、本記事を通してご理解いただけると大変嬉しく思います。
ある経営者が語りかけた言葉
「企業が存続する上で、インサイトセールスは肝になるぞ」と、私に語りかけてくれた経営者がいます。
インサイトセールスとは、お客様の経営層から理念やビジョンを聞き出し、それを実現するための最新の営業手法です。
企業の存続危機
当時、東日本大震災が発生し、多くの企業の存続が危ぶまれました。この経営者も例外ではなく、商品の値上げをしないことには、会社の存続ができない状況になっていたそうです。
お客様に値上げを提示すると、お客様も業績に苦しんでいる状況のため、罵声をあびたり非難されたりしたそうです。しかし、値上げに快諾してくれたお客様も存在したといいます。
経営層同士の関係性がキモ
値上げに快諾してくれたお客様を分析すると、例外なくお客様の経営層と良好な関係を築けていたといいます。
企業を支えているのは「人」、だからこそ、「経営層との関係構築」がキモになるというのがよくわかるストーリーです。
コロナで同じ状況の「いま」
東日本大震災と同様に、新型コロナウイルスのパンデミックにより、2020年度は多くの企業は厳しい業績になりました。
東日本大震災の際に、私に「インサイトセールス」の大切さを教えてくれた経営者の言葉を活かすべきときは、まさにこのコロナ禍の状況だと考えています。
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2020年 新型コロナウイルスのパンデミックにより、私たちの会社は大変厳しい業績になりました。
「2019度の売上を維持できれば御の字…。」「今年度の売上成長は、期待できないな…。」と感じていました。このように考えた経営者の方は、多いはずです。なぜならば、あらゆる業界で商品やサービスが売れない状況になったためです。
社内へのメッセージ
厳しい業績の中、私は一刻も早く売上を出さなければならないと感じていました。
これまで、創業以来、必死に積み上げてきたお客様との関係も、コロナウイルスのパンデミックにより一気に壊されるような感情が芽生え、大変苦しい期間でした。
しかし、私は社内メンバーに「売上を出そう」というメッセージは一切出しませんでした。厳密に言うと、喉から手が出るほど言いたかった…、いつ反射的にこの言葉が口からこぼれ落ちても不思議ではない精神状態でした。
ただ、私は「いままで、私たちと一緒に仕事をしてきたお客様を、なによりも優先して助けよう。」というメッセージを社内に出しました。
溢れ出た営業への想い
もちろん、会社の売上数字を見れば、誰でも売上を出さなければならない状況であることは一目瞭然でした。しかし、私は「売上を出すために営業をしているのではない」という初心を思い出したのです。
私は、「お客様にありがとう。」と直接言われたいと思い、30歳を過ぎてから営業の世界に飛び込みました。忘れかけていたこの想いが、初心を抱いた時の数十倍にも膨らみました。
やはり、「私は、お客様にありがとう。」と言っていただきたい…。私にとってできることの第一歩は、「お世話になったお客様を助けること」、だったのです。
貫いたインサイトセールス
私は、売上よりも大切だと考えている「お客様の理念やビジョンの実現支援のため」に営業をしています。コロナ禍で苦しい中、売上だけに固執することなく、お客様を助けようと想い、行動してきました。
一年経ったいま、私たちが貫いた「インサイトセールスを実践する」という考え方は、間違ってなかったと感じています。実際に、コロナウイルスのパンデミック以前よりも、お客様との関係性が強固になっているからです。
まるで、コロナウイルスが、私に「本当にやりたい営業は、インサイトセールスである。初心を忘れるな!」と語りかけてくれたようでした。
インサイトセールスをする上で大切なこと
営業が売上を出さない限り、企業は存続できません。しかし、私は売上だけに固執することなく、インサイトセールスの実践にこだわりました。
真のパートナーとは
なぜ、コロナ禍という苦しい中であっても、このように信念を貫けたのか…。それは、私にインサイトセールスの意義を教えてくれた経営者(本記事冒頭記載)のように、真のパートナーと仕事をしたいからです。
景気が苦しいから、外的な要因があるから…、こういった理由で仕事のご縁が切れることは、真のパートナーとは言えません。私は、苦楽を共にする真のパートナーと仕事をしたいと考えています。
まさに、コロナ禍が「苦」であったわけですが、いずれ訪れる「楽」を共にするために…、という想いで仕事をしてきました。
営業を楽しむ
苦楽の「楽」が示している通り、私は真のパートナーと共に苦しいときを乗り越え、共に「楽しむ」ことを実現したいです。
私たちのビジョンは、「営業する/されるが楽しい世の中の実現」ですが、まさにこの言葉を実現するために、「苦」を共に乗り越えたかったのです。
真のパートナーの見つけ方
真のパートナーの見つけ方は、画一的なものはないはずです。しかし、私が考えている3つのポイントを押さえていただくことで、真のパートナーを見つけることができる確率は高まります。
その1:理念やビジョンの実現を一番に考えている会社か
多くの企業は、自社のホームページに理念やビジョンを掲載しています。しかし、その言葉だけでは、なかなか理念やビジョンの真意をつかみ取ることはできません。
私の経験則ですが、地域密着型を宣言している会社や創業者一族が経営している会社は、理念やビジョンの実現を一番に考えていることが多いです。
その2:情熱的な経営層や管理職層がいるか
理念やビジョンは、中長期的な視野で作成されます。そのため、任期が決まっている経営層は、理念やビジョンの実現を最優先に考えていない場合があります。
管理職層においては、自分自身のやりたいことと、会社の理念やビジョンが完全に一致している場合は、特に真のパートナーになる可能性が高いでしょう。
その3:お客様のポテンシャルはあるか
理念やビジョンを実現するためには、企業にポテンシャルがあり、中長期的な視野で物事を検討できる余裕があることが条件になります。
また、お客様にポテンシャルがあれば、世の中に与えるインパクトも大きくなります。
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まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、コロナ禍でインサイトセールスを実践する意義について考えました。
コロナウイルスのパンデミックのように、災害が発生すると商品やサービスが売れなくなり、私たち営業にとっては苦しい市場環境になります。しかし、このような環境の中でも、私たち営業がお客様に対してできることはたくさんあります。
苦楽を共にする真のパートナーを見つけ、理念やビジョンの実現という中長期的な視野でご支援をすることこそ、インサイトセールスの醍醐味になります。
次回は、「トラックメーカーでの事例」と題して、インサイトセールスの事例をご紹介します。
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高橋 研
株式会社アルヴァスデザイン 代表取締役 CVO
早稲田大学大学院理工学研究科終了後、株式会社ファンケルに入社。
その後、30歳を節目に営業の世界に飛び込み、多くの会社の教育支援に携わる。
2013年株式会社アルヴァスデザイン設立。2018年「実践!インサイトセールス(プレジデント社)」出版。