営業マネジメント
2021.08.07

部下育成で忘れてはならない7つのポイントと3つのスキル

こんにちは。松下です。

本日は 部下育成について見ていきます。

会社に入り、業務経験を積むと、部下を育成するという機会が出てくると思います。

弊社は営業人材をメインに教育を行っていますが、「部下の育成がうまく行かない」「自分と同様に動ける部下がいない」といったお悩みをよく耳にします。

一筋縄ではいかない部下育成。どんなスキルを身につければ良いのでしょうか?また、上手くいくポイントは?

上記の疑問について弊社のこれまでに蓄積したノウハウをもとにまとめています。部下育成に役立つ書籍の紹介も盛り込みました。

是非、この記事が皆さまの部下育成にお役立ていただければ幸いです。

1. 部下育成とは?

部下育成とはどのようなものでしょうか。文字を額面通り受け取ると「部下を育てる」ことになります。

例えば、新入社員である部下を育成するなら、「業務が一人前に出来るように育てていく」という事になります。

ここで、大事なポイントは、「育てる」の解釈です。「育てる」=「成長をサポートする」と言い換えることが出来ます。

つまり、部下育成とは、部下が仕事を自身で出来るように、上司がサポート・支援していくという事になります。

2. 部下を育成する意味とは?

本章では部下を育成する意味について考えていきます。なぜ、部下を育成する必要があるのでしょうか?特に重要な3つ意味についてご紹介します。

2.1   会社の業績向上につながる

1つ目は、会社の業績向上につながるためです。

育成途中の段階では、育成の負荷が高く、部下が伸び悩むこともあるかもしれませんが、成長を支援している内に、部下が成長し業績に貢献できる領域が拡大していきます。

また、熟達してくれば作業効率もあがります。その為、結果的に会社の業績向上につながります。

2.2   チームとしての一体感向上

2つ目はチームとしての一体感向上のためです。

上司・部下がバラバラに動くことも可能ですが、上司が部下をサポートする事で、情報共有が自然と促され、協力関係が築かれます。そのため、チームとしての一体感が生まれ業務効率化や成果の向上にもつながります。

2.3   一人ひとりの市場価値が向上する

3つ目は、従業員一人ひとりの市場価値が向上することです。

育成をすることで、スキルの底上につながり、文化の波及やイノベーションのきっかけが生まれることにもつながります。

上司が部下を育成する中でスキルは向上することはもちろんですが、その中で自社の理念やビジョン・文化といった部分も継承されていきます。

また、育成をしていくと、業務内容について密に関わる事も出ます。その際に、部下からの発案でイノベーションが生まれるという効果もあるかもしれません。

以上、部下を育成する意味について3つご紹介しました。

では、この部下育成はどのような方法があるのでしょうか?次の章で見ていきます。

3. 部下育成の方法とは?

部下育成の方法は大きく分けて3つです。

1つ目は「OFF-JT」2つ目は「OJT」、3つ目は「自己啓発」です。1つずつ分けて説明していきます。

1. OFF-JT

OFF-JT」とは「Off-The-Job Training」の略称です。

具体的には、部下が、実際の業務現場を離れ「外部講師が登壇する研修やセミナー、E-ラーニング」などを受講し、業務に必要となるスキルやマインドを身につける方法です。

2. OJT

OJT」とは「On-The-Job Training」の略称です。

具体的には、実際の業務現場の中で、業務に必要となる具体的なスキルやマインドを上司が指導をし、部下が学んでいくという方法です。

3. 自己啓発

「自己啓発」とは自身の意志で「自身のスキルアップや成長」を目的に自ら学ぶことをさします。

具体的には、本を読んだり、社会人大学に通ったりなど手段は多岐にわたります。この自己啓発にかかる経費を会社が一部負担し、支援するという企業も多いです。

以上3つが育成の方法の大きなカテゴリーになりますが、より細かく知りたい方はこちらの記事が参考になります。
>【営業マネージャー必見!】部下育成の方法と重要な5つのポイント

4. 部下育成のスタイル4選

前章では、部下育成の方法についてみていきましたが、具体的に部下を育成するスタイルにはどのようなものがあるのでしょうか?

大きく4つのタイプに分かれますのでご紹介いたします。

1 ボス型(指示型)

1つ目は「ボス型」の部下育成です。

指示型とも表現されることもありますが、その名の通り、上司が細かく部下に指示を出し、教えていくという育成スタイルです。「どのように業務を行えばよいか」やり方について細かく指示を行います。

また失敗をした場合には、逐一、上司が部下に指摘を行い、改善策を上司が考え、部下に指示をします。基本の型を身につけるためには効果的ですが、指示待ちになってしまう傾向があります。

したがって、自身で発想をひろげ、イノベーションを起こしていくことは難しいと言えます。

2 支援型(サーバント型)

2つ目は「支援型」の部下育成です。

「サーバント型」ともいわれることもありますが、あくまで部下に考えさせ自発的に行動することをサポートする育成スタイルです。このスタイルの場合はやり方を上司が部下に細かく伝えることはしません。

上司が部下に対し質問・傾聴などを通して「部下自身で考え、振り返る」ように促します。経験が浅い部下の場合には非常に困難ですが、主体的に考え、業務を進める習慣が身につき成長が早いと言われています。

参加型

3つ目は「参加型」の部下育成です。

これは、上司が決断する前に部下の意見を求め、活用するスタイルの育成方法です。上位下達のスタイルとは異なり、部下の意見に耳を傾けながら進めていきます。

そのため、上司部下のチームとしての関係性が高まる事が期待できます。しかし、部下の能力が未熟な場合には、うまく行かないケースが多いです。

逆に、部下のスキルが高く、自立心があり自己解決能力が高い場合には有効なスタイルです。

4 達成志向型

4つ目は「達成志向型」の部下育成です。

部下に対して、高い目標を設定し、自身で努力し対応するように求めるスタイルの部下育成方法です。

このスタイルの場合、部下が望ましい結果が出ない場合も、細かくやり方を手取り足取り教えるという事はせず、あくまで自身で努力し成果があがるのを待ちます。

そのため、あくまで努力し達成した先には、良い事があるという期待で部下を鼓舞します。

以上4つのスタイルをご紹介しました。

不確実性の高く、多様化が進む昨今では、部下育成をするにあたっては、部下それぞれにおいてどのスタイルを適用させるかを見極め活用する必要があります。

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5. 部下育成の重要な心得7選

本章では、部下を育成する際に特に重要となる心得を7つにまとめました。日々、自身の業務対応に追われ忙しい中でも以下の7つを忘れずに部下育成に進めて行きたいものです。

1. 部下の価値観を知る

1つ目の心得は「部下の価値観を知る」という事です。

ここが育成を行う上でとても大切なポイントになります。現在、ダイバーシティという言葉も広く使われるようになっていますがまさに「多様化」の時代です。

部下のAさんには効果のあった指導方法が部下のBさんには全く機能しないということも起こります。

その根幹にあるものは、「価値観」です。まずは、部下がどんな人生を送り、人生・仕事に対し何を大切に思っているのかをしっかり聞きましょう。

2. 部下に話をさせる

2つ目は、「部下に話をさせる」です。

部下育成の現場では、ついつい上司が部下に対して一方的に話し続けてしまうという傾向があります。しかし、これは部下の成長の観点からいうと今一つです。

なぜなら、人間は自分の言ったことを自分で聞いているという特徴があるからです(この現象を生物学上「オートクライン」と言います)。

この特徴を上手に活用し、部下に話をさせ、部下が自分自身で理解をするチャンスを作ることが大切です。

例えば、レクチャーを行ったら部下に対し「今聞いた内容を話してみて」と投げかけるといった具合です。こうすると上司が伝えた事に対する理解度が分かるうえに、本人の理解にもつながります。

3. 部下を認める

3つ目は「部下を認める」という事です。コーチングの世界で「アクナレッジメント」と呼ばれています。

これは、部下を「褒める・賞賛する」といった行為とは異なります。「褒める・賞賛する」には上司の主観や主張が含まれているからです。「部下を認める」際にはあくまでも「事実」に着目しましょう。

具体的には、現在、部下が業務上到達している所を事実ベースで、そのままお伝えし、部下が達成感を持つように促します。

例えば、「昨年は提案書2枚だったけど、今年は提案書20枚書きましたね。」といったような言葉が該当します。

4. 致命的でない弱みは後回しにする

4つ目は、「致命的ではない弱みは後回しにする」です。

部下を育成しているとついついで「出来ていないこと」に着目しがちです。いわば部下の弱みに当たる部分が目に留まるのです。しかし、この弱みを何とかしようと指導に明け暮れている場合は要注意です。

その弱みが致命的であれば是正する必要がありますが、致命的ではない弱みに関しては後回しにしても良いという考え方を持つことが大切です。

5. 個々の強みにフォーカスする

5つ目は「強みにフォーカスする」です。

部下を育成する際には、「部下の強みは何か?」にフォーカスすると良いでしょう。なぜなら、部下の強みに合わせてサポートをすることで、部下は成長のスピードが加速するからです。

その結果、部下が成長実感を持つことができ、自己効力感を高めることにもつながります。部下一人一人強みは異なります。そのため、部下それぞれの強みを捉え、持ち味を生かすことを大切にしましょう。

6. 失敗から成長する機会を作る

6つ目は「失敗から成長する機会を作る」事です。

部下自らが失敗をすることは、成長につながる大切な経験です。上司としては、部下の失敗はひやひやするものですが、時に見守る事も大切です。

ここは失敗しても大丈夫という環境を作り、ある程度、自身で判断し動ける裁量を与え、経験させましょう。

7. モチベーションの維持・向上を図る

最後は「モチベーションの維持・向上を図る」です。

部下育成は一朝一夕にできるものではありません。昨日出来たと思ったことも、別の案件になると出来ない、また、一時は急激に成長を感じられたが、ある日を境に伸び悩むという事も起こります。

そのため、モチベーションを維持し・向上する手立てを用意しておきましょう.

例えば、1on1 ミーティングの場をあらかじめセットしておき、定期的な対話を心掛けるというのも良いでしょう。また、以下の3つはモチベーションに関わる大切な要素です。

  • 成長実感がわく目標設定になっているか?
  • 貢献実感がわく仕事の割り振りが出来ているか?
  • 協働実感がわく仕事の演出が出来ているか?

そのため、上記の3つは出来ているかどうかについて日々チェックしていくと良いでしょう。

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6. 部下育成でこれだけは知っておきたいスキル3つ

部下を育成する上で必要となるスキルについて見ていきます。

細かく洗い出すとスキルは多岐にわたる為、本記事では、「カッツモデル」をベースにこれだけは知っておきたい3つをご紹介します。

カッツモデルとは、アメリカの経営学者であるロバート・L・カッツ氏によって提唱された、職階ごとに必要となる能力を纏めたフレームワークです。

主に、管理者の「スキル」に着目し、調査を行い、3つのスキルが必要であることを発表しました。

そのスキルとは「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つで、それぞれの管理者の階級によって求められるスキルは変わるとしています。

具体的には管理者の階級が低いときには「テクニカルスキル」が重要で、階級が上がると「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」がより重要視されます。

1950年代に発表されたフレームワークですが現在でも十分に活用可能な内容です。

それではこの3つのスキルについてひとつずつ見ていきましょう。

テクニカルスキル

1つ目のスキルは「テクニカルスキル」です。

テクニカルスキルはいわば「基礎業務スキル」とも言い換えることが出来ます。業務を遂行するために必要となる基礎的な業務スキルのことです。

このスキル無しに上司として部下を育成することは難しいと言われています。なぜなら、部下に手本を見せることが出来ないからです。上司が部下に対し、あるべき姿を見せる事ができないのは致命的です。

また、部下が業務を行った際に、その業務が正しく行われているか?もし間違っているならどの点が違うのか把握し、伝える必要があります。その点でもテクニカルスキルは重要です。

また、部下からしても基礎業務スキルが無い上司は信頼することが出来ないでしょう。

そのため上司部下の関係性を円滑にするためにもテクニカルスキルは重要なスキルと言えます。

ヒューマンスキル

2つ目は「ヒューマンスキル」です。

ヒューマンスキルとは、他者との関係性構築のスキルの事です。他者と良好な関係を築く力、こと部下育成においては、部下との信頼関係構築を行い、成果を最大化させるような働きかけを行う力とも言えるでしょう。

ヒューマンスキルと一口にいっても中身は多岐にわたりますが、最たるものは「コミュニケーションスキル」です。

傾聴スキル、相手を理解するために観察をするスキル、また対話スキルなど複合的な要素が含まれますがいずれも重要です。

特に、対話の中では、部下の価値観・情熱・才能を知る為の質問を行ったり、部下のビジョンや目指す姿を知る為の質問を行ったりしながら、部下と関係を築く力が求められます。

部下が主体的にやりがいをもって働く為には特に重要になるスキルです。

コンセプチュアルスキル

3つ目は「コンセプチュアルスキル」です。

こちらが一番高度なスキルと言われています。端的にいうと、「全体を俯瞰する力」のことです。その他にも、企業全体を俯瞰して見る力、物事の本質を見る力、具体化されていない事象を具体化する力、とも言われています。

上位職になればなるほど、目の前の業務だけではなく、他部門や市場、世の中の動向など多くの要素を踏まえて考える必要があります。部下育成も同じで、業務経験を抽象化して伝えることが必要になります。

また、部下が目の前の業務に一喜一憂するのをサポートするだけではなく、人材としての市場価値をつけるにはどうすれば良いか?自社でどのような活躍をしていく人材としてふさわしいか?などを見抜きながら育成していくために必要なスキルになります。

また、コンセプチュアルスキルは以下の14の要素から成り立つとされています。

まさに、不確実性の高いこれからの時代に求められているスキルとも言えます。

  1. ロジカルシンキング
  2. ラテラルシンキング
  3. クリティカルシンキング
  4. 多面的視野
  5. 柔軟性
  6. 受容性
  7. 知的好奇心
  8. 探求心
  9. 応用力
  10. 洞察力
  11. 直観力
  12. チャレンジ精神
  13. 俯瞰力
  14. 先見性

※参照元:https://www.mdsol.co.jp/column/column_122_1453.html

以上、部下育成で知っておきたい3つのスキルをご紹介しました。

ご自身のポジションにあわせて必要となるスキルはこの3つの中でグラデーションしていきます。一度に身につけるのは難しいですが、まずは概論として心得にして頂ければ幸いです。

7. 部下育成に役立つおススメの書籍5つ

最後に、部下育成に役立つおススメの書籍をご紹介します。お役立て下さい。

①ノルマは逆効果(藤田 勝利 著 2019年 太田出版)

ドラッカーから直接マネジメントを習い、現在もマネジメント理論を研究している藤田勝利氏による一冊です。特に、営業の部下育成に役立つ内容が書かれた書籍がこちらです。

多くの営業組織が持っているノルマ。しかし、それは本当に必要なものなのでしょうか。

今までの常識を覆し、営業組織に新しい風を吹き込む一冊です。ノルマに関わるマインドセットも部下の成果を揺るがす1つの要因です。是非ご一読を。
>ノルマは逆効果

②新版 ドラッカースクールで学んだ本当のマネジメント(藤田 勝利 著 2021年日経BP社)

ドラッカースクールの卒業生である藤田勝利氏が、日本語でわかりやすくドラッカーのマネジメント理論を解説しています。

自分自身の理解を深め、どのように社会に貢献していくかといったセルフマネジメントから、部下メンバーの強みを見つけ、どのように伸ばしていくかといたところまで幅広く書かれている書籍です。

マネージャーの実例をベースに、部下育成における原理原則を理解する事が可能です。また、原理原則は普遍的な内容であるため一読頂く価値のある本です。
>新版 ドラッカースクールで学んだ本当のマネジメント

③コーチングマネジメント(伊藤 守 著作 2002discover21

コーチングについて分かりやすく纏められているのが本書です。

初版が2002年、かれこれ20年近く第17刷まで増刷されているロングセラーです。部下育成の中でもとくにコミュニケーションに関するスキルが強化される内容です。初めて部下を持つことになったという人には特に目から鱗の内容です。

自身がプレイヤーとして活躍することと、部下を育成するということは全く異なる力が必要であるということがつまびらかになるからです。
>コーチングマネジメント

④人を動かす 新装版(デール カーネギー 著 1999年 創元社)

名著中の名著です。ビジネスパーソンであれば一度はどこかで見聞きしたことのある本かもしれません。

人間関係の構築の原則が書かれている本です。1937年の初版以来、廃れることなく現在でも通用する内容となっています。部下を育成する際には、人間関係の原則を知り、関わっていく方がスムーズです。

一度読んだ事がある方も再読頂く中で、育成のヒントが見つかる事でしょう。未読の方はこれを機にぜひ、ご一読ください。
>人を動かす 新装版

⑤リーダーシップの旅(野田智義/金井壽宏 2007年 光文社)

本書では、不確実性の高いこれからの時代、どのようなリーダーが求められるのかが書かれています。また、リーダーシップとは何か、リーダーへの3stepが解き明かされています。

部下を育成する上では、リーダーシップを取る必要が要所要所で出てきます。本書はその一助になるでしょう。
>リーダーシップの旅

8. まとめ

いかがでしたでしょうか。部下育成について見ていきました。

部下育成の意味、方法、スタイルの説明から、必要となる心得、スキルまで順を追ってご説明いたしました。また、役立つ本についても紹介しました。

部下育成は一朝一夕でうまく行くものではありません。また、部下を育成するスキルは、部下の価値観を知り、信頼関係を構築していく実践の中で育まれます。

是非、本記事でご紹介した内容が皆様の部下育成の現場で役立てば幸いです。

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この記事を書いた人

松下 慶子

株式会社アルヴァスデザイン・マーケティング担当。
大学卒業後、大手電機メーカーでシステム営業を経験。
2014年よりアルヴァスデザインへ参画。
旅と犬をこよなく愛する1児の母。

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