営業のトークスクリプト作成術と活用法。これであなたも営業トークの上級者へ。
目次
こんにちは。石井です。
今回は、営業トークのスクリプトについてご紹介します。
「営業トーク」に関する本を読んだり、インターネットで「営業トーク」を調べてみたりしたけれども、どうも上手くいかないと感じている人は、良い情報になると思います。
営業トークを覚えて、いざ使ってみたれどもうまく行かないという原因の多くは、本やネットに書かれた営業トークを「真似ている」だけだからです。
営業トークは、お客様の心動かすことができて初めて意味をなします。単純に、営業トークを真似るだけではマスターしたと言えません。
お客様の心を動かすためには、自分にあった表現に置き換える必要があるのです。さらに、トークスクリプトはマニュアルと違い、正解が一つであるとは限りません。
お客様のご状況やその場の雰囲気に応じて、複数のプロセスが存在します。ぜひ、自分にあった営業トークを作成して、活用してみましょう。
トークスクリプトとは?
一般的にトークスクリプトとは、「話をするための台本」のことです。営業担当者が、お客様にアプローチしたり、ヒアリングしたりする際に活用することができます。
しかし、トークスクリプトとは、それを完璧に覚えて話せるようになったら絶対に売れるようになるというものではありません。
なぜならば、お客様が考えていることは、一人ひとり異なりますし、商談の雰囲気もそれぞれです。
では、結局その場で対応を少しずつ変えなければならないのに、なぜトークスクリプトが必要なのでしょうか。
営業改革お役立ち資料の資料ダウンロードはこちらトークスクリプトを作成する3つのメリット
トークスクリプトを作成するメリットは、大きく分けて3つあります。営業のトークスクリプトを作成することは時間がかかる作業です。
しかし、これら3つのメリットを考えると、一旦時間をかけて作成するだけの価値はあります。
メリット1:会社で表現を統一できる
営業担当者がお客様と会話をする際、営業担当それぞれで細かい表現は異なることが多いでしょう。しかし、自社の商品やサービスについては、営業担当者が変わっても統一した表現をすべきです。
なぜならば、お客様にとって、営業が変わる度に商品やサービスの訴求ポイントが変わると不信に感じるからです。
また、一つのお客様に対して複数の営業担当者が存在するケースに関しても同様で、「こっちの営業担当者は○○と言ったのに、あっちの営業担当者は××と言っている。」とならないようにしましょう。
メリット2: 営業組織の底上げができる
一つの営業のトークスクリプトを作成すると、優秀な営業担当者の営業トークを営業組織で共有することになります。そのため、営業組織としての営業力が底上げされます。
特に若手の営業担当者は、先輩や上司が普段使っている営業トークを知ることで、その能力を早期に開発できるようになります。
メリット3:営業担当者に自信が芽生える
営業のトークスクリプトをすらすらと言えるようになると、商談中に余裕が持てるようになります。
営業を初めてしたときは、商品やサービスの説明に必死でなかなかお客様の表情を読み取ることができなかったと思います。
しかし、営業の回数を重ねていく内に余裕が生まれ、お客様の表情に気を配りながら営業ができるようになってきます。
これと同じように、営業のトークスクリプトを営業シーンごとに身につけると、気持ち的にも楽になり自信を持って商談に臨めるようになるのです。
具体的なトーク例
営業をする上でありがちなシーンを6つに分けて紹介しています。
シーン1:アポイントメント取得
電話でアポイントを取得する際のポイントを確認した上で、実際にお客様にアプローチしましょう。これらは、インサイドセールスにも有効。
最初の10秒で、「私に関係ある話だ!」と思わせる
日々多くの営業電話を受けているお客様にとって、「どうやら関係のない話だな。」と思われてしまえば、その先につながる可能性は極めて低いです。そのため、お客様に価値ある話を端的に伝えましょう。
しかし、焦るあまり早口になったり小さな声になったりしてはいけません。落ち着いたトーンで話しましょう。
営業トーク例:「本日は、○○の件でお電話させいただきました。」
切り返しトークの準備をする
電話でアポイント取得を試みる場合、断り文句を言われるケースが多いですよね。実は、その断り文句の多くは、ある程度パターン化することができます。
代表的な断り文句だけでも、しっかりとした切り返しトークを準備しましょう。
営業トーク例(お客様から既存の取引先があると言われた場合):「信頼できるパートナー様がいらっしゃることは、大変素晴らしいことですね。ぜひ最初は比較検討するといった位置でも構いません。」
シーン2:飛び込み営業
飛び込み営業をする際には、「要件提示」「切り返しトーク」「伝言願い」の3つを準備しましょう。
要件提示
「なぜ営業に来たのか?」ということを、しっかりお客様の受付に伝えましょう。ここで活用できるフレームワークの一つに、バランススコアカードというものがあります。
これは、経営の4視点と言われている「財務」「業務プロセス」「顧客」「学習と成長」を網羅したものです。
営業トーク例:「~~の財務に関する資料をお持ちしました。」
切り返しトーク
飛び込み営業をすると、当たり前ですが大体断られます。ただ、その断られ方を分析するといくつかのパターンに分けることができます。
特に、よく言われるなと思う典型的な断り文句に対しては、切り返しトークを準備しておきましょう。
営業トーク例:(お客様から「既存のベンダーがある」と断られたとき)「御社にとって、任せることができるベンダー様がいらっしゃることは頼もしいですね。ぜひ、最初は比較するという意味でも構いません。」
伝言願い
飛び込み営業で、軽視できないことに「伝言願い」があります。お客様の担当者がいない場合には諦めずに、少しでも印象に残る伝言を残しましょう。
それが次回以降のアプローチにつながる可能性があります。その際には、「会社名と氏名」の他に「何の目的で来たのか」を伝える必要があります。
営業トーク例:「○○社の△△が、~~の件で来ました!とだけお伝えください。」
シーン3:初回訪問
営業担当者にとって、初回訪問から次の商談につなげることが一番難しいことだと言っても過言ではありません。初回訪問では、お客様に3つのステップで価値を提示しましょう。
ステップ1:次回の商談内容
次回の面談につなげるために、最も大切なことは「次回の商談内容」で価値を訴求することです。
すごくシンプルですが、お客様は「この商談には価値があるな」と思わない限り、わざわざ商談したいと思わないからです。
そのため、営業担当者は初回訪問の中で、お客様の関心事をつかみ、それと次回の商談内容を紐づける必要があるのです。
営業トーク例:「本日お話をさせていただいた中で、○○様は特に~~についてご関心が高いように見受けられました。ぜひ改めて次回お話をお聞かせいただけませんか。」
ステップ2:他社と比べて自社の優位性
次回の商談内容に価値を感じたお客様は、次に「なぜあなたの会社と商談する必要があるのか」と考えています。
なぜならば、ほとんどの場合既存のベンダーが存在して、情報収集であればその会社にお願いすれば良いと感じることが自然だからです。
そのため、「なぜ私たちでなければならないのか」をお客様に伝える必要があります。
営業トーク例:「お客様と同業種で、比較的規模も近い会社様の事例がございます。この事例はつい先日の最新のものですので、弊社がどこよりも新しい情報をお伝え出来ます。」
ステップ3:次の商談時期
他社と比べての優位性を感じたお客様は、最後に次の商談時期について考えています。
例えば、「本件は来期以降のことなので、商談はその時で大丈夫ですよ。」といったような言葉をお客様からいただいたことはありませんか?こちらは、断り文句である可能性が高いです。そのため、営業として切り出しトークを準備しておくべきです。
営業トーク例:「本件は来期の案件なのですね。こちら検討に入る前に、他社の導入事例や失敗事例をお手元にまとめておいた方が、時期が来たときにスムーズに準備ができると思いますがいかがでしょうか。」
シーン4:ヒアリング
ヒアリングをする上で、身につけておきたいフレームワークとして、お客様が達成したい「ゴール」と「現状」の「ギャップ」を問う質問があります。こちらもステップ通りに順番に聞いていきましょう。
ステップ1:ゴールを問う
ゴールを確認することで、お客様が達成したい姿を明確にしましょう。ゴールが曖昧な状況で商談を続けると、良い提案をすることができません。
なぜならば、提案とはゴールを達成するためにするのであって、ゴールが曖昧だと、提案の方向性も芯を外したものになってしまう可能性があるためです。
営業トーク例:「今回の案件で、目指したいゴールはございますか?」「何が、どういう状態になっていると、今回の施策が成功したと言えますか?」
ステップ2:現状を問う
ゴールを明確にすることができたら、次は現状を確認しましょう。ここでのポイントは、具体性です。なるべく具体的に理解するために、お客様社内のメンバーからインタビューすることも効果的です。
営業トーク例:「今回の案件で、特に改善したいと思う現状は何ですか?」「これを変えたいという具体的な話は、社内であがっていますか?」
ステップ3:ギャップを問う
ゴールと現状が明確になったら、最後に「ギャップ」を問いましょう。このギャップを埋めるために、営業は提案します。お客様と営業が認識しているギャップの一致もはかりましょう。
営業トーク例:「今回のゴールが10合目だとしたら、いまはおおよそ何合目くらいですか?」「ギャップは○○にあると認識しておりますが、認識に齟齬はありませんか?」
シーン5:提案
お客様に提案をする上で大切になることは、「お客様本人の言葉を活用すること」と「未来視点の話をすること」です。
お客様の言葉を使う
提案をする際には、実際に今までの商談でお客様が発した言葉を活用すると良いです。
できれば、提案書の中にもお客様の言葉をちりばめましょう。お客様の言葉を入れることで、お客様は自分事として提案を受け入れやすくなります。
営業トーク例:「以前、○○様からお伺いした通り~~です。」
未来視点で伝える
商品やサービスを提案する際には、「現在のこれを変えるために導入しましょう。」と伝えるよりも、未来視点で伝えた方が、お客様にとって共感しやすいものとなります。
理由は、現在に視点をあてると、現在取り組んでいるものを否定していると受け取られる可能性があるためです。また、未来に視点を切り替えることで、ワクワク感を与えることもできます。
営業トーク例:「本提案は、3年後に○○を実現するために、お話させていただくものになります。」
シーン6:クロージング
クロージングに活用できる営業トークは多数あります。今回はその中でも代表的な5つの手法をご紹介します。
手法1:テストクロージング
テストクロージングとは、「クロージング」を「テスト」することです。「もし~」といったように仮の話をしつつ、お客様の購買意志がどのくらい高まっているのかを確認します。
営業トーク例:「もし、サービスを導入するとしたら、何にお役立ちできそうですか?」「このサービスを利用することで、何を実現したいですか?」
手法2:オプションの付与
お客様にとって、1つの商品やサービスよりも、類似した商品やサービス(3つ程度)の中から選択する方が選びやすいという心理があります。「松竹梅」のように提案内容に幅を持たせるのも良いでしょう。
営業トーク例:「こちら3つの中から1つを選ぶとしたら、どちらを選ばれますか?」
手法3:阻害要因の排除
お客様が意思決定をしないということは、何かしらの阻害要因が働いているためです。
その中で、まず考えられるのがコストの視点です。何かを買うときは、「もっと安く買えないか」と考えますね。また、「もっと良い商品はないか」という品質の視点をもっています。
そのため、コストの視点と品質の視点は必ず確認しましょう。
営業トーク例:「こちらのサービスをご購入するにあたって、お気になされている点はございますか?率直にお聞かせください。」
手法4:評価基準の明確化
商品やサービスを導入する際、お客様は何かしらの評価基準を元に導入の可否を検討します。営業担当者として、お客様の評価基準を確認し、その評価基準をいかに満たしているのかを伝える必要があります。
代表的な評価基準には、「コスト」「スピード」「実現可能性」「効果」「リスク・副作用」などです。
営業トーク例:「今回、サービスの導入をご検討される中で、どういった基準で決定されるのですか?」
手法5:メリットとデメリット
クロージングでは、商品やサービスの導入メリットを伝えることはもちろんのこと、しっかりとデメリットも伝えましょう。
正直にデメリットを伝えることで、お客様から信頼を獲得でき、最終的に商品やサービスの導入が決定することもあります。
営業トーク例:「こちらのサービスをご購入いただければ、~~というメリットが期待できます。しかし、デメリットもございます。正直にお伝えさせていただきますと・・・になります。」
飛び込み営業切り返しトーク集の資料ダウンロードはこちらトークスクリプト作成の5つのステップ
営業のトークスクリプトを個人で作成することも大切ですが、営業組織として一つのトークスクリプトを作成することも重要です。今回は、トークスクリプト作成の5つのステップをご紹介します。
ステップ1:ペルソナを作成する
まずは、ターゲットとなるお客様のペルソナを作成しましょう。ペルソナを作成することで、営業メンバー同士で、営業トークを作成する際のイメージが湧きやすくなります。
ペルソナの代表的な項目としては、氏名・年齢・性別・職種・学歴・職歴・家族構成・プライベートの趣味などです。
ステップ2:営業をシーンに分ける
アプローチ、ヒアリング、提案、プレゼン、クロージングなど営業には様々なシーンがあります。業界や会社によって、これらのシーンは異なりますので、自社に適した営業シーンに分けましょう。
ステップ3:各営業シーンのゴールを決める
分けた営業シーンごとに、達成したいゴールを設定します。例えば、「アプローチ」では「次回商談のアポイントメントを獲得する」が代表的なゴールになります。
ステップ4:ゴール達成に必要なアクションを特定する
ステップ3で定めたゴールを達成するために、何が必要なアクションなのかを特定します。例えば、「キーマンである○○さんと面談する」などがあげられます。
ステップ5:具体的なトークスクリプトを作成する
ステップ4で特定したアクションを遂行するために、具体的にどのような営業トークが良いのかをまとめます。
その際には、社内の優秀な営業担当者が実際に使用している営業トークを参考にすると良いです。ただし、どの営業担当者でも真似ができる営業トークである必要があります。
トークスクリプトを作成する上での3つの注意点
営業のトークスクリプトを作成する際には、3つの注意点に気をつけましょう。
注意1:売り込み表現を多用しない
「商品やサービスを導入してもらいたい」という営業の気持ちが前面に出ないようにしましょう。売り込み表現が多い営業トークは、かえってお客様からの信頼を失うきっかけにもなりえます。
注意2:信用度の低いデータや数値を用いない
データや数値を活用する際には、出典を確認しましょう。信用度の低いデータや数値は、説得力に欠けるだけではなく、お客様からの信用を失うことにもつながります。
注意3:例外的なシチュエーションを考慮しない
営業のトークスクリプトを作成する際には、よくある典型的なシチュエーションを優先させましょう。当たり前ですが、お客様はそれぞれ異なる見解を持っています。
その一つ一つに対応する営業のトークスクリプトを作成することは不可能です。最も生産性の高い営業のトークスクリプトは、「よくあるシチュエーション」に限定したものだけを作成することです。
トークスクリプトの活用術
営業のトークスクリプトをいかに実践で活用するかについてご紹介します。せっかく作ったのに、上手に活用できなければ意味がありません。また、営業のトークスクリプトに完成はありません。
一度出来上がったら、実践を繰り返してさらに精度の高いものに仕上げていきましょう。
ロールプレイングの実施
営業のトークスクリプトをいち早く身につけて、実践するためにはロールプレイングが欠かせません。朝礼の時間を活用したり、週に何回か時間を作ったりして、営業メンバー同士でロールプレイングを実施。
実践での活用と振り返り
実際にお客様に対して、トークスクリプトを活用した商談を行った場合は、振り返りをしましょう。その際には、良かった点だけでなく改善点もまとめましょう。
これらは個人でまとめるだけではなく、営業メンバー同士で共有しあうことで、互いの知見も共有されます。
ABテストの実施
トークスクリプトを作成したが、「どっちの表現がお客様に響くのかわからない。」ということもあり得ます。その際には、どちらの場合も実施してみると良いです。
その際に、お客様からの反応をまとめておき、実際に良かった方を採用するようにしましょう。
トークスクリプトの改善
営業のトークスクリプトは、改善をすることで精度が高まっていきます。最低でも月に一回は、トークスクリプトを見直し、改善するようにしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。営業のトークスクリプトについて、何か皆さんにとって良いヒントはありましたか。
営業トークは、正しい方法でスクリプトを作成して、それを練習すれば必ず上達します。もちろん個人でトークスクリプトを作成することも良いですが、営業メンバー同士で作成するとなお良いです。
営業メンバーで、互いの良いところを学び合うこともできるため、営業組織全体のレベルアップにもつながるからです。
確かに、営業のトークスクリプトを作成することは大変な仕事ですが、一度できてしまえば、それを改善しながら活用を続けることで、営業のレベルは必ず向上します。ぜひ実践してみてください。
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石井 健博
ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。3歳息子のパパ。