営業における質問力の高め方!営業研修会社が実証する誰でも身につけられるテクニックを紹介!
目次
こんにちは。石井です。
今回のテーマは、質問力です。
営業にとって、「お客様の情報を聞き出す」ということは、どの営業プロセス(営業プロセスの典型例:アプローチ→ヒアリング→提案→クロージング)であっても大切です。
しかし、営業プロセスがアプローチ段階に近いほど、お客様から自発的に話してくれることは少なく、営業から質問をして「お客様の情報を聞き出す」必要があります。
今回のコラムでは、「お客様の情報を聞き出す」ためのテクニックをご紹介していきます。
営業担当者における質問力の重要性
営業スタイルの変遷
日本における営業スタイルは時代とともに変化をしてきました。戦後の営業スタイルは、大きく3つに分けることができます。
その3つの営業スタイルの中でも、とりわけ現在とこれからの営業にとって、なぜ質問力が大切なのかを紐解いていきます。
物売り営業
戦後の日本では、いわゆる粗悪品というものが多く出回っていました。本物か偽物かというものが、なかなかお客様自身では区別することが難しかったわけです。
そんな時代に活躍した営業スタイルは、「物売り営業」です。「物売り営業」とは、商品の説明をしっかりすることで、この商品が本物であることをお客様が認識できるようにして買ってもらう営業スタイルです。
つまり、お客様に「質問」をするよりも、いかに正しい情報を伝えることができるかが、優秀な営業の条件であったわけです。
個人力営業
いわゆる日本のバブル時代に活躍したのが「個人力営業」です。「個人力営業」とは、お客様と親しくなることを一番に考えた営業スタイルです。
接待ゴルフや接待飲食が盛んに行われ、とにかくお客様に親しくなりべったり横にくっついているような営業がお客様に選ばれました。
ソリューション営業
バブル崩壊した後の時代に活躍したのが、「ソリューション営業」です。
「ソリューション営業」とは、お客様の課題を川上(=上流)※から把握して、お客様の課題にそったソリューションを提示することでお客様から選ばれてきました。
※川上(=上流)とは、お客様自身が課題に対して、まだあいまいな認識を持っている段階を指します。一方で、川下(=下流)とは、お客様自身が課題に対して、明確な認識を持っていて、それを解決するための解決策を検討している段階を指します。
なぜ営業担当者にとって質問力が大切なのか?
ソリューション営業から次の時代へ
「ソリューション営業」をしっかりしているのに、どうしても最後は価格競争や条件競争になってしまうことが少なくありません。近年はソリューション営業を駆使しても、競合優位性を保つことが難しい時代になってきているのです。
お客様にとってみたら、多くのベンダーが存在し同じようなソリューション営業をしてくるため、結局最後は価格や条件で決めるという結論になってしまうからです。
営業担当者は、「ソリューション営業」から次の時代へと営業スタイルを変遷していく必要があるのです。
これからの時代に求められるのは「質問力」に優れた営業
これからの時代に求められるのは、ずばり「質問力」になります。「ソリューション営業」では、どうしても競合ベンダーと差別化することが難しく価格競争・条件競争になりやすいことは先ほどお伝えしました。
では、そこから脱却するためにはどうすべきなのか。
その答えは「お客様自身が気付いていないこと」や「お客様が気付いてはいたけれども手を付けていなかったこと」などを質問によって気付かせて、新しい課題の解決策を営業とお客様がともに創造していくことにあります。
質問力の「ある営業」と「ない営業」
質問力のある営業は、お客様が気付いていない課題や解決策のヒントを聞き出し、お客様とともに未来を創造することができます。
お客様も気付いていない課題や解決策のヒントを引き出すため、他社とはその時点で差別化できます。そのため、お客様からは信頼を得られるだけでなく、「ソリューション営業」で陥った価格競争や条件競争の泥沼化を回避できる確率は高まります。
つまり商談での勝率は格段に高まるでしょう。一方、質問力のない営業は、これから先ずっと競合ベンダーと差別化することは難しいでしょう。
こういった理由で、営業担当者にとって、「質問力」は必須のスキルなのです。
顧客理解の基本3スキルの資料ダウンロードはこちら質問力は準備で決まる
質問力を高めるためには、準備が不可欠です。商談の事前にしっかりと準備をして、商談で「お客様情報を聞き出す」ことができるようにしましょう。
仮説をもって質問を準備する
商談の前にいくつか仮説のある質問を準備しておきましょう。仮説とは、「仮の答え」です。お客様と似た課題を解決した事例や同業他社の事例などから仮説を立てて、実際にお客様の商談で質問することをオススメします。
もちろん、仮説は外れても問題はありませんが、少しでも的を得た仮説になるように、論理的に仮説を構築しましょう。
フレームワークを活用する
ビジネスで広く活用されているフレームワークを利用して、お客様への質問を考えることも有効です。代表的なビジネスフレームワークはチェックしておきましょう。
PEST
PESTとは、Politics(政治)・Economy(経済)・Society(社会)・Technology(技術)の4つをまとめるフレームワークです。
この4つは、私たちのビジネスに大きく影響しますが、私たちの努力で変えることが大変難しいものです。それゆえ、お客様も気にされているものがこの中であるはずです。質問を考えるにあたっての観点の一例をご紹介します。
Politics(政治):お客様の事業をゆるがすよう法律改正や政治的規制は無いか?
Economy(経済):経済の動向・平均所得や為替動向などがお客様の事業にどのような影響を与えているか?
Society(社会):社会的な流行や価値観、人口動向がお客様の事業展開に関係していないだろうか?
Technology(技術):お客様の事業に影響を与える技術動向はないだろうか?
特に、テクノロジーに関しては、日々意識されて仕事をされている方が多いので、事前に質問を準備する際に考えてみましょう。
5フォース
5フォースとは、「競合」「買い手」「売り手」「新規参入」「代替え」の5つの脅威をまとめるフレームワークです。よほどニッチな業界でない限り、この5つの脅威は存在します。
変化が目まぐるしいこの時代に、これらの脅威について、お客様も気にしているはずです。
3C
3Cとは、「市場」「競合」「自社」をまとめるフレームワークです。お客様の市場で何が起きているのか、またお客様はお客様の競合と差別化するためにどのような施策を取っているのかを理解するために有効です。
SWOT
お客様の内部環境の「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」、外部環境の「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」をまとめるフレームワークです。
お客様がどういった強みと弱みを持っていて、市場に存在する機会にどうビジネスを展開して、何を脅威に感じているのかを理解するために有効です。
商談前に何を調べるか
準備に要することができる時間に応じて、商談前に事前に調べることを決定しましょう。下記1社あたりの準備時間を参考に、必要な情報を調べるようにしましょう。
5分程度(飛込営業や電話での新規アプローチなど)
この時間で調べられることは、ホームページに載っている「企業概要」と「企業の商品・サービス」です。特に、お客様が強くアピールしたそうな商品・サービスはないかを確認しましょう。
15分程度
ホームページの「企業概要」と「企業の商品・サービス」に加えて、採用ホームページも確認しましょう。採用ホームページは、初めてこの会社を知ったという人にもわかりやすい説明が書かれています。
30分以上
上記に加え、お客様の業界の動向や競合他社の動きもチェックしましょう。社内で、お客様と似た業界を担当している人がいたら、事前に話を聞くことも良いと思います。
ダメな質問の仕方
オープンクエスチョンばかり繰り返す
オープンクエスチョンとは、「はい」「いいえ」では答えられないような質問をいいます。一方で、「はい」「いいえ」で答えられる質問をクローズクエスチョンといいます。
オープンクエスチョンは、お客様が考えられていることや計画していることなど具体的な質問をしたいときに有効になります。ただ、オープンクエスチョンを多用しすぎると、対話の観点がまとまりにくく、お客様も答えるばかりで疲れてしまいます。
目的の分からない質問を繰り返す
せっかくの良い質問であっても、お客様にとって目的がわからなければ、その質問の良さが半減してしまいます。お客様にとって唐突だなと感じる質問をなくし、何のためにこの質問をするのかという目的の部分をしっかりと確認した上で質問をしましょう。
質問の話題が変わりすぎる
当たり前ですが、質問は対話の中の一部です。話の流れにそったタイミングで質問をしましょう。お客様との商談の前に、質問リストを準備しておくことは有用な手段ではあります。
しかし、質問リストに載っている質問をしたいという考えから、対話の話題が変わる質問をするのは避けましょう。もし対話の流れを変える場合は、「少し話がそれてしまうのですが」といったように、話題が変わることをしっかりと伝えましょう。
質問が尋問調
事前に質問を用意して商談にのぞむ際や、まだ経験の浅い営業担当者が特に注意すべきことの一つが、「質問が尋問のようになっていないか」ということです。
例えば、お客様に「課題となっていることの理由」を問いたいと思っているとします。「なぜ~~なのですか?」と聞きますね。そして、さらに深堀したいときはもう一度「なぜ~~なのですか?」と聞きますね。
課題を深堀していくことは大切である一方で、お客様に「なぜ?」ということを繰り返し聞いてしまうと、「問い詰められている感覚」になり尋問のようになってしまいます。
「理由」を問う際には、「なぜ?」という言葉を使いすぎていないかの確認が必要です。
どうしても繰り返し理由を聞きたい場合は、「なぜ~~~なのですか?」と聞く代わりに、「そう思われたきっかけは何ですか?」など、「きっかけ」という言葉を使用するのも良いです。少し柔らかいニュアンスになります。
質問力のテクニック紹介
ここでは、質問力のテクニックをいくつかご紹介します。
確認する質問・深める質問・広げる質問
3つの質問を駆使するだけで、かなりお客様のことを多面的に質問することができます。
確認する質問
お客様の発言した内容について、営業が言い換えをすることで理解が正しいかを確認するための質問です。
お客様にとっては、営業がしっかりと自分のことを理解してくれていると感じることができます。お客様に「この営業にもっと話がしたい」と思ってもらうためにも、大切な質問になります。
深める質問
お客様に理由や具体例を聞くことで、深い部分まで理解するための質問です。
理由を聞く際には、「なぜですか?」という問いに加え、「きっかけは何ですか?」という問いをしましょう。たくさん「なぜ?」と聞かれると、お客様は尋問されているような印象を受けてしまいます。
「きっかけ」を聞くことで、お客様はすんなりと答えやすくなります。
広げる質問
他の選択肢がないか、または優先順位をどうするかといったことを聞きたい場合にするべき質問です。例えばお客様が述べた課題について、「他に課題がないのか?」といった視点で質問をしましょう。
お客様自身も気付いていなかった課題が見つかるかもしれません。
ゴール・現状・ギャップを問う質問
お客様が達成したいゴールと現状のギャップを問う質問になります。実際の営業トーク例を参考に実践してみてください。
ゴールを問う質問
「数年後、何もかもが上手くいったとしたら、どういう状態になっていることが理想ですか?」「会社や部署でこうしていきたいといった理想の姿はありますか?」
現状を問う質問
「もうすでにゴールを達成しているようにも見えるのですが、現状はいかがでしょうか?」「これを変えていきたいといった声はお客様社内であがっているのですか?」
ギャップを問う質問
「ゴールを達成するのが10合目だとしたら、大体いまは何合目くらいですか?またその理由をお教えください。」「ゴールに近づくために、どういうことが必要だとお考えですか?」
経営層にささる質問
お客様の経営層と商談ができる場合は、経営層にささる質問を準備する必要があります。最重要な観点は2つです。「何を大切にしているのか」という経営理念と、「何を目指しているのか」というビジョンです。
経営理念を問う質問
「従業員の方に常々伝えていることはありますか?」「企業が拡大しても変わらずに大切にしたいと思っていることは何ですか?」
ビジョンを問う質問
「事業を通じて、何が達成されると嬉しいですか?」「5年度はどうなっていたいですか?」
SPIN話法
SPIN話法は、お客様の潜在ニーズを確認するのに適した話法として有名です。1995年にイギリス人のニール・ラッカム氏が考案した話法で、世界中の企業で取り入れられています。
SPINとは以下4つの質問を指します。
S=状況質問(Situation Question)
P=問題質問(Problem Question)
I=示唆質問(Implication Question)
N=解決質問(Need-payoff Question)
この4つの質問を上から「S→P→I→N」と順番に行う事で、お客様の潜在的な課題を引き出します。
S=状況質問でお客様の現状について確認します。続いて、P=問題質問で「お客様にとって現在何が問題になっているのか?」という事を質問します。
そして、I=示唆質問で、「その問題が現在のままだと、どんな影響が生じるか?」について質問し、お客様自身に問題の重要性や解決の緊急性について気づいて頂きます。
最後に、N=解決質問で「問題解決をすることに意味がありそうか?」「どんな効果がありそうか?」を質問します。
そこでお客様が、問題を解決した先の効果について認識頂ければ、あとは自社がどのようにお手伝いできるかについて話せば良いのです。
このように、SPIN話法はお客様がご自身の口で質問に答えることによって、お客様が抱えている問題・その重大さ・解決したらどんな効果があるかについて、お客様自ら認識して頂くという特徴があります。お客様も気づいていなかった想いを発見し、一緒に整理するという事も可能です。是非活用してみてくださいね。
コーチング質問技法
コーチングは相手を深く知り、相手が自発的に動き出すコミュニケーションです。コーチングの質問技法は数多くあります。その中から、営業商談の場で是非活用頂きたい1つをピックアップしました。
相手に深く考えさせる質問
商談中、「お客様が質問に答えてくれるが、なかなか考えがつかめない。もっと深い部分を知りたい。」そんな状況において役立つのが「相手に深く考えさせる質問」です。お客様が思考を深めるためには「相手の視点を変える」という観点が重要です。
視点の変え方のオススメは3つです。
1つ目は「主体を変える」です。視点をお客様ご自身という主体ではなく、「お客様のお客様から見て」「上長や経営層から見て」というように視点を変えて質問をします。
2つ目は「時間軸」です。「現在」「過去」「未来」と時間軸をずらして質問をし、視点を行き来することで気づきを起こします。
3つ目は「前提を変える」です。例えば「制約条件が無かったら」「こんな制約があったら」と視点を変えることで相手に気づきを起こすことが可能です。
以上、「主体を変える」「時間軸を変える」「前提を変える」この3つの視点の変更を質問に交えながらお客様の考えをより深く聞き出しましょう。
経営者との対話の観点の資料ダウンロードはこちらまとめ
いかがでしたでしょうか。
コラムには、具体的な質問文も記載しました。ぜひ参考にしていただき、質問力を磨いてみてください。質問力は訓練を積むことで確実に上達します。
しっかりと練習を積めば、お客様の情報をより多く聞き出すことができるようになります。
お客様の情報を聞き出せる営業は、お客様から見たら「自分たちのことをよくわかってくれる営業」と認識され、お客様から信頼される存在になります。
お客様から信頼されると、さらにお客様は色々なことを話してくれるようになります。
このようにお客様と深い関係を築き、営業とお客様でともに課題を見つけて解決していく姿を目指してみてください。
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石井 健博
ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。3歳息子のパパ。