営業
2021.08.02

営業改革のスタートからゴールまでのロードマップ!成果を残す営業組織の作り方と育て方!

こんにちは、石井です。本日は、「営業改革」について考えていきます。

皆さんは、営業改革というとどのようなことをイメージされますでしょうか。

新しい営業スタイルを定着させること、SFAを導入して営業活動の効率化など、さまざまなことをお考えになられると思います。

本記事は、営業人材の教育を専門におこなっている弊社の視点で「営業改革」について解説していきます。そのため、「営業改革」の中でも特に「教育」に関連した営業改革になります。

ぜひ、ご興味がある方はご一読ください。

営業改革の概論

まずは、「営業改革」の基本についてみていきましょう。

営業改革とは?

そもそも、「営業改革」とはどういった意味でしょうか。

「改革」とは、対象を変化させることという意味です。今回の対象は「営業」であるため、「営業改革」は「営業に関連する事柄に変化をもたらすこと」という意味になります。

営業に変化をもたらす行為には、さまざまな方法が存在します。例えば、SFAを導入することや、新しい評価制度を導入することがあげられます。

上述した通り、本記事では、営業人材の育成を専門に行っている弊社の視点で、「教育」という切り口で「営業改革」を考えていきます。

では、「営業改革」はなぜ必要なのでしょうか。

営業改革の必要性

営業人材の教育という切り口で、「営業改革」が必要な理由としては「外的環境の変化によって、求められる営業スタイルが変化してきている」ということが一番大きいです。

私たち営業は、外的環境に合わせて変化をしなければ、これからの時代で生き抜くことはできません。

昨今では、AIの発達により「営業職」というものが、この先必要なくなるのではないか?という議論もされています。

営業スタイルの変遷

外的環境の変化に大きく影響を受ける営業職ですが、これまでも営業スタイルは変化をしてきました。

例えば、戦後の日本では「ニセモノ」ではなく「正規品」を売る営業が最もお客様から評価を受けました。現代において、「ニセモノ」を売る営業がいるのか?という想像すら難しい状況ですが、当時は多くの粗悪品が出回っていました。

その後、バブル期に突入をすると、接待飲食や接待ゴルフを繰り返し行い、「個人の信頼度をいかに高めるか?」という個人力営業が流行しました。バブル期ということもあり、多くの費用が使えたのです。

そして、バブルが終わる頃には、「ソリューション営業」が盛り上がりを見せました。

多くの営業担当者が駆使したソリューション営業ですが、現代では「ソリューション営業だけでは、価格競争や条件競争から抜け出すことができない。」という悩みを抱えている営業担当者も増えてきました。

なぜならば、ソリューション営業で提案する内容はロジックをベースにしているため、他社の営業担当者と差別化することが難しく、インターネットが発達した世の中では、検索情報によって簡単に価格を比べられてしまうためです。

これからの時代に生き残るためには、どのような営業スタイルが求められるのでしょうか。

そのヒントとなるのが、2018年プレジデント社より発売された「実践!インサイトセールス!(高橋 研著)」に記載されている「インサイトセールス」という新しい営業手法です。

この営業手法は、お客様の経営層が描く理念やビジョンをクリエイティブな発想を元に実現支援をしていくというものです。

外的環境の変化にあわせた営業改革が必要

このように私たちの営業スタイルは、時代とともに変化をしてきました。

これからの時代を生き残るためにも、営業人材を育成することで「営業改革」をしていくことが求められます。外的環境の変化にあわせて、新しい視点で営業に改革を起こしていかなければならないのです。

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営業改革のフレームワーク

営業改革とは、営業組織を変革することです。

今回は、組織を変革する際に頻繁に用いられる2つのフレームワークをご紹介します。

ドイツ出身の心理学者であるクルト・レヴィンが提唱する「レヴィンの組織変革プロセス」とアメリカ出身の経営学者であるジョン・コッターが提唱する「コッターの8段階プロセス」です。

レヴィンの組織変革プロセス

レヴィンの組織変革プロセスは、3段階に分かれています。「解凍」「変革」「再凍結」です。

営業組織を変革する際には、この3段階のプロセスを順に進めていくことが重要です。

プロセス1:解凍

どんな営業組織であっても変革を起こす際には、組織の緊張を解きほぐさなければなりません。

これが、まさしく解凍のプロセスにあたります。思い描く形の氷を作りたいと思った場合、一度いまある氷を解凍して、思い描く形の型に入れなおさなければなりません。

営業組織も、氷と同じことが言えます。営業組織を変革する際には、まず「解凍する」というのが最初のプロセスなのです。

また、解凍する際に念頭に置いておく必要があることがあります。

それは、変革に不安を感じて「反対勢力」となる方たちが存在するということです。

私たちも、多くの営業組織の変革に関わってきましたが、必ずこのようなメンバーは存在します。
「私は、売れているから問題ない。」
「今の組織は居心地が良いから、何も変える必要がない。」
といった言葉が出てくることが想定されます。

しかし、このように組織変革の不安から、変革の抑止力が生まれることは不思議なことではありません。組織の変革者は、このような抑止力を当たり前と思い、しっかりと受け止め「解凍する」必要があるのです。

一方で、営業組織の変革を行う際には、変革に前向きな営業担当者もいます。

心に火がついているメンバーを早めに変革メンバーに巻き込み、徐々に他のメンバーに着火していくようにしましょう。

プロセス2:変革

解凍のプロセスでは、営業組織に属するメンバーは「変革」の必要性を感じました。しかし、大切なことは必要性を感じさせることではなく、実際に行動レベルで変化を起こすことです。

変革のプロセスでは、新しい営業組織の進む方向や変化を起こす営業手法などをしっかりと共有しましょう。また、これらを共有する際には、一方通行で伝えるだけではなく、随所にメンバーから意見をもらうことも重要です。

そして、変革プロセスでは新しい営業手法を実践するための「学習」も欠かせません。なぜならば、いくら変革内容をわかっていても、できるとは限らないためです。

そして、もしできないと感じたメンバーが存在した場合、「結局、この変革は机上の空論だった。」と言われかねません。そのため、営業組織のメンバーがしっかりと実践できるレベルになるまで学習しましょう。

プロセス3:再凍結

営業組織のメンバーが変革した状態を実践できるようになったら、「再凍結」をします。組織の変革は、一過性のものではなく、持続的なものでなければならないためです。

再凍結をするためには、ハード面とソフト面を意識しましょう。

ハード面とは、「評価制度」や「SFAの仕組み」などがあげられます。営業組織のメンバーが変革内容を実践することで評価を受ければ、それを継続して行う心理が働きます。また、SFAを活用し仕組みに組み込むことで持続性が増します。

ソフト面では、継続的な「学習機会」を作ることが大切です。変革のプロセスで、営業組織のメンバーに学習をして「できる状態」になったとしても、日々忙しい営業活動の中では、すぐに自己流の営業手法に戻ってしまうことがあります。

そのため、定期的な学習機会を作ることで、変革後の状態を保てるようにしましょう。

コッターの8段階プロセス

コッターの8段階プロセスも、組織変革をする際に欠かせないフレームワークです。

1つずつプロセスを見ていきましょう。

プロセス1:危機意識を高める

営業組織に変革を起こす際には、まず「今の営業組織のままではいけない」という緊迫した感情をメンバーに抱かせることが大切です。

人間は、現状を維持しようとする「慣性の法則」をもっています。そのため、強い危機意識をメンバーが感じないと、なかなか変革に向けて動き出すことはできないのです。

プロセス2:変革チームを結成する

営業組織を変革するには、現場で旗を振り、メンバーを鼓舞する影響力者が必要です。

また、その影響力者の周りには、変革に賛同するチームが必要です。大きな営業組織になればなるほど、変革には連帯したチームが必要になります。

プロセス3:ビジョンと戦略を生み出す

営業改革をする際には、向かう方向性を明確にする必要があります。これをビジョンと言います。

変革をする際には、「どこを目指しているのか」ということに加えて、「どのように実現するのか」という戦略も必須です。メンバーにとって、ワクワクする「ビジョン」を構想し、実現できると感じる「戦略」を策定する必要があるのです。

プロセス4:ビジョンと戦略を周知徹底する

ビジョンと戦略は、変革する営業組織のメンバーに周知します。ここで大切なことは、周知を徹底することです。変革するためには、「ビジョン」と「戦略」への共通認識を持ち続けなければなりません。

メンバーが納得した後でも、定期的にビジョンと戦略は伝える努力をしましょう。

プロセス5:営業組織のメンバーの自発を促す

変革を実行するのは、営業組織のメンバー一人ひとりです。

つまり、メンバーが自分たちで動かなければ、営業改革は成功したと言えません。営業組織を変革する際には、失敗リスクもあります。例え、メンバーが失敗をしてもそれを許容する心理的な安全性を確保することも大切です。

プロセス6:短期的に成果を生み出す

営業組織の変革を波に乗せるためには、「成果」を創出することが一番です。成果が出ることで、営業組織にさらに火が付くと言えます。

短期的に成果を出し、その成果に対してはしっかり報いましょう。この流れを作ることで、メンバーはさらに自発的に動き、成果創出へと動き出します。

プロセス7:成果を推進する

成果は短期的ではなく、中長期的にも継続的に生み出せるようにしなければなりません。そこで必要になるのが、評価制度の改定や採用、そして営業人材の育成です。

例えば、一度定着した営業スタイルであっても、時が経てば、メンバーは忘れてしまうこともあります。そのため、継続的な成果創出には、成果を出し続けられるための育成が不可欠なのです。

プロセス8:変革内容を営業組織の文化にする

変革内容を、どの営業組織のメンバーも自然と実行できるようには、営業組織の文化にしていく必要があります。

「変革内容をやって当然で、やらないことが不自然だ」と思うくらいの文化に育て上げていく必要があります。

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営業改革の事例①

1つ目の事例は、弊社がご支援させていただいた大手飲料メーカーのインサイトセールス実践プロジェクトです。

本プロジェクトは、九州地区のチェーン向けの営業担当者を対象として、従来型の「ソリューションセールス」から、新しい営業手法である「インサイトセールス」へと変革するために実施しました。

本プロジェクトの概要

本プロジェクトでは、九州地区で成績優秀な6名の営業担当者を選抜しました。

半年間のプロジェクト期間を設けました。定量的な売上目標に加えて、定性的な「お客様経営層から良好な反応を得る」というゴールも設定しました。また、最終的なビジョンとしては、「インサイトセールスを営業組織に定着させる」というものとしました。

初期段階

変革の初期段階では、「レヴィンの組織変革プロセス」でも解説した通り、営業組織メンバーの「解凍」を一番に考える必要があります。

そのため、選抜された営業担当者にとって「なぜこのプロジェクトに参加する必要があるのか」ということをしっかり理解できるまで、徹底的に話し合いをしました。

当初、選抜された営業担当者の中には、「私がこのプロジェクトに選ばれた意図がわかりません。」という声があがることもあり、変革に向けて「解凍できている」状態とは言えませんでした。

「解凍」するために、選抜された営業担当者の話をしっかり聞くということはもちろんのこと、「コッターの8段階プロセス」にもあるように、お客様内での旗振り役である影響力者に「インサイトセールスを導入する」ためのビジョンを熱く語っていただきました。

選抜された営業担当者の「解凍」には時間を要しましたが、結果として共通のビジョンを追いかけるチームを結成して、実践に向けて動き出すことができました。

中期段階

インサイトセールスの実践を通して、成功事例を出すことを意識しました。弊社のコンサルタントが、選抜された営業担当者と共に、営業戦略を練り、同行営業まで実施しました。

「コッターの8段階プロセス」にもあるように、改革を行う際には「メンバーの自発的な行動を促す」ことと、「短期的な成果を生み出す」ということが大切です。

選抜された営業担当者の上司には、失敗を許容することを依頼して、チャレンジしやすい環境を作りました。また、弊社のコンサルタントが実際にお客様先に同行することで、少しでも早く成果を創出するという動きをしました。

そして、同行営業をする際には、「育成」ということも意識して、同行営業の前後でコーチングとティーチングを実施することで選抜された営業担当者の営業スキルとマインドの向上を促しました。

結果として、6名中5名の営業担当者が定量的な成果を短期的に創出することができました。

後期段階

短期的な成果を継続させるために、「インサイトセールス」をいかに営業組織の全体に波及させるかということを意識して実施しました。

ここでキーマンになったのは、選抜された営業担当者の上司です。上司には、選抜された営業担当者の他にも複数の部下メンバーを抱えていました。

そのため、部下メンバーの一人が成果を上げた場合、その成果を他のメンバーにも波及させることで、チームの成果を最大化させたいと上司は構想を描いていました。

成功事例が出たメンバーを持つ上司は、そのメンバーに「事例を語ってもらう」だけでなく、「どのように成功したのか」をレクチャーさせることで、事例を波及させました。

営業改革の事例②

2つ目の事例は、弊社が自ら実施した営業組織の変革です。

本プロジェクトは、オーガニック・マネジメント・コンサルティング株式会社の代表取締役社長である伊藤秋津氏にもご支援いただき、営業組織の変革を行いました。

私たちは、お客様に営業改革を提供していますが、私たち自らの変革も欠かさずに行っています。

本プロジェクトの概要

本プロジェクトは、株式会社アルヴァスデザインの営業改革を実施したものです。

具体的には、私たちの営業のスタンダードを言語化して新しいメンバーを迎えた際に活用することや、営業とマーケティングの連携を強化することを目的に実施しました。

初期段階

本プロジェクトも、「レヴィンの組織変革プロセス」と「コッターの8段階プロセス」にそって実行しました。まずは、プロジェクトメンバー以外のメンバー(非プロジェクトメンバー)を、どのように「解凍」していくのかです。

プロジェクトを開始した時点では、私たちの営業組織は、年々売上が右肩上がりに成長していました。そのため、非プロジェクトメンバーにとってみると「なぜ、売上調子が良いのに変革しなければならないのか。」という疑問が出てくるのが当然です。

そのため、この営業改革が「何のために必要なのか?」を、非プロジェクトメンバーが納得するように、丁寧にコミュニケーションすることが不可欠でした。

弊社は、会社全体としては右肩上がりの成長をしていましたが、メンバーが増えてきている分、一人ひとりをみると、悩みやモヤモヤ感を感じている様子も少しずつ増えている状況でした。

例えば、他業界から転職してきた社歴の浅いメンバーたちからは、「成果を上げている先輩でも、人によって営業スタイルやアドバイス内容が大きく違うので、やや戸惑っている・・・」「自分なりの営業スタイルを確立したいが、まずはこの業界での勝ちパターン(型)を理解したい」「先輩も忙しい中で、一つ一つ質問するのは申し訳ない。

まずは営業の全体像を自分で理解したい」という悩みやニーズも強くなってきていました。

そこで、プロジェクトチームから、この取り組みがそうした悩み・ニーズを解決するものであることを丁寧にコミュニケーションしていきました。コミュニケーションを繰り返し行うことで、非プロジェクトメンバーにとってみても、本プロジェクトが自分事化していくようになりました。

弊社に限らず多くの企業において、社員は、「会社にとってどんなメリットがあるか」よりも、「自分自身にとってどんな得があるか」により関心があるのが自然な姿だと思います。 

営業改革の際には、コッターの言う「危機意識を高める」に加えて、改革を実現した場合の「個人にとってのメリット」を具体的に伝えて、「改革した方が自分にとって得だな」という空気感を、出来る限り醸成することが重要になります。

中期段階

プロジェクトを進めていく中で、メンバーへの進捗共有を定期的に実施しました。「コッターの8段階プロセス」では、「メンバーが自発的に動くこと」が大切であると書かれています。

そのため、定期的にメンバーから意見をもらうことで、プロジェクトメンバー以外でもしっかりと本プロジェクトに参加しているという認識をもってもらうようにしました。

また、「コッターの8段階プロセス」では、「短期的な成果を生み出すこと」も重要であると書かれています。そのため、新しく導入することになった営業手法については、1日かけてメンバーを育成する機会を設けました。

具体的には、実際に営業ロールプレイングをすることで、メンバーに落とし込みを行いました。

後期段階

新たな営業手法を冊子にまとめることで、弊社に属する営業メンバーが常に実践で変革内容を意識できるようにしました。

この冊子は、弊社の営業に対する「考え方・価値観」から、商談の各局面でのトークスクリプトなど「具体的な行動のガイドライン」まで細かく設計されています。

また、メンバーそれぞれの強みも最大限に発揮できるように、具体性と自由度の両方を大切にした内容になっています。

そして、営業改革の現場での浸透・実践のカギを握るのは、「営業マネジャー層」です。

営業マネジャーが改革の目的に共感し、新しい行動を自ら体現して、チームメンバーにも自分の言葉で適切にコーチング・ティーチングできるかどうかが、改革が現場で後戻りなく実現するかどうかの成否を握ると言っても過言ではありません。

そこで弊社では、営業マネジャー層とメンバー層の双方がプロジェクトチームに参加して、普段から行っている「商談直後でのメンバーとの振り返りミーティング」と「定期的な1 on 1ミーティング」における、冊子を活用したコーチング・ティーチング方法を明確に定めました。

この結果、日々の営業サイクルの中で、マネジャー・メンバーともに新たな営業手法を自然に理解・実践するようになり、これまでにない社員の成長と成果に結びついていることを実感しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では、営業改革についてお伝えいたしました。

外的環境の変化によって、私たちも営業スタイルを変化させていかなければなりません。そして、営業組織のメンバーに向けて、変革を起こす際には、必ず「育成」とセットで考えていく必要があります。

なぜならば、単に制度を設計しても、メンバーのスキルやマインドが伴わない場合は、変革が失敗に終わるケースが多いためです。

「レヴィンの組織変革プロセス」や、「コッターの8段階プロセス」を営業改革に応用することで、営業組織の変革を推進することができます。具体的な事例も掲載しているので、ぜひご覧ください。

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この記事を書いた人

石井 健博

ブランドマネージャーとして、マーケティングを担当。
営業・リベラルアーツ・マネジメントなどのコラムを発信中。
趣味は、読書・英語学習・ラグビー。3歳息子のパパ。

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